東京大学高齢社会総合研究機構と埼玉県や東京都で不動産・建設事業を手掛ける住協グループは共同で、「人生100年時代」に対応するためのモデル住宅を開発した。東京都練馬区の大泉町にある住協グループの分譲地に、4棟を建設する。2023年1月11日に着工し、同年6月ごろの竣工を目指している。
いずれも木造2階建てで、延べ面積は90m2前後だ。竣工後、まずはモデルルームとして公開する。販売価格は「現時点では未定」(住協グループ)である。
開発した東大高齢社会総合研究機構の大月敏雄副機構長は、「人生100年時代が現実になってきたのに、住宅のつくり方は昔と変わっていない」と問題提起し、こう続ける。「これまでの分譲住宅は買う側も売る側も売買するタイミングに意識が向いており、特定の年齢層や世帯に合わせてつくられてきた」
これに対し、今回のモデル住宅は、住民のライフステージの変化に追従できる備えをあらかじめ盛り込んでいる。特徴的なのは、外から2階に直接アクセスできる外部階段を設けたことと、1階と2階の両方に水回りを備えることだ。
1階に洗面化粧台と浴室、キッチンがあるが、2階にも洗面化粧台とシャワー室を用意した。さらに2階にキッチンも設置できるように、配管は用意してある。トイレは1~2階に1つずつあり、玄関は1階だけでなく外部階段の先の2階にもある。
こうすることで、1階と2階をいつでも別の住戸に分けて使えるようにした。例えば、子育て期間は一戸建て住宅として暮らすが、子どもが成長したら共同住宅に変更し、2階を子ども世帯の住宅にしたり賃貸住宅にしたりする使い方を想定している。「空き部屋や空き家が生まれるのを防ぎやすくなる」(大月副機構長)
4棟のうち1棟には室内階段がなく、代わりにエレベーターを設けている。他の3棟には階段室を設けた。階段室は十分な広さを確保するなどし、将来エレベーターに変更できるようにした。住民が高齢者や車椅子利用者になって階段の上り下りが難しくなっても、エレベーターで2階に行けるようにしている。