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 米OpenAI(オープンAI)が2022年11月に公開し、話題を呼んでいる対話型AI(人工知能)のChatGPT。建設業界では、どのような活用方法が考えられるだろうか。建設分野の実務者や専門家は、「教科書的な仕事はすべてAIに置き換わる」「建築設計にシミュレーションを活用する潮流がさらに加速する」などと指摘する。

OpenAIが公開したChatGPTのウェブサイト(出所:OpenAI)
OpenAIが公開したChatGPTのウェブサイト(出所:OpenAI)
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 ChatGPTは、英語や日本語などの自然言語で質問を投げかけると、こなれた文章で回答してくれる言語モデルだ。膨大な教師データを基に学習されており、まるで人間の専門家のような的確な答えを返すこともあるため、一躍注目を集めている。文章の作成や翻訳に用いたり、プログラミングに活用したりと、世界中のユーザーが思い思いに活用方法を探っている。

 記者も試しに「建設業でのChatGPTの使用例を教えて」と尋ねてみた。すると、次のような答えが返ってきた。

「建設業においては、ChatGPTを使用して以下のようなタスクを自動化することができます」
「設計書の自動生成: オートデスクのAutoCADなどのCADソフトと統合し、建物の設計図を自動生成することができます」
「工事見積もりの自動作成: ChatGPTを使用して、工事見積もり書を自動生成することができます」
「コミュニケーションの自動化: ChatGPTを使用して、顧客やサプライヤーとのやり取りを自動化することができます」
「作業手順の自動生成: ChatGPTを使用して、作業手順や作業指示書を自動生成することができます」
「不正行為の検知: ChatGPTを使用して、建設プロジェクトにおける不正行為を検知することができます」

 いずれも、リアリティーを感じさせる回答だ。「コミュニケーションの自動化」や「作業手順の自動生成」は、建設業界ならではの使用例とまではいえないが、それ以外は設計やCAD、見積もり、不正行為といったキーワードを盛り込みながら、もっともらしい説明になっている。

 さらに突っ込んで「ChatGPTとCADソフトを使用し、建物の設計図を自動生成する方法は?」と質問してみた。回答はこうだ。

「建物の設計に必要な具体的な要件を定義します」
「ChatGPTを使用して、建物の設計に必要な文章を生成します」
「CADソフトを使用して、文章から得られた情報を元に、建物の設計図を作成します」
「ただし、建物の設計は法律的な義務や責任があり、専門知識が必要なため、建築士などの専門家による確認が必要です」
「また、建物の設計には、地盤や地震などの自然環境に対応するための技術も必要です」

 「建築士などの確認が必要」と断りを入れてくるところなどは、セールススタッフがユーザーに免責事項を説明しているようで面白い。

 ChatGPTに関心を持つユーザーは、建設業界にも多い。千葉県成田市を拠点とする地場ゼネコン、平山建設の平山秀樹社長もその1人だ。平山社長はクラウドサービスなどを活用して自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきた。同社は22年8月、経済産業省から「DX認定事業者」として認定を受けている。

 平山社長が日本の中規模建設会社の労働生産性をデジタルで向上させる方法についてChatGPTに質問したところ、「ロボットや機械学習による自動化で手作業を削減」「進捗の把握やコラボレーションの促進などに役立つプロジェクト管理ソフトの導入」などと的を射た回答が返ってきて驚いたという。