リコーは手持ちサイズの機器で周囲360度の点群と画像のデータを取得する技術を開発した。一般的な3次元レーザースキャナーよりも手軽に空間の3次元情報を得られるようにすることで、建設現場での活用を目指す。既に建設会社との共同実験に着手しており、2023年後半までに、開発した技術を搭載した試作機を完成させる予定だ。
試作中の機器「ワンショット3D復元デバイス」は片手で握れる大きさで、投光装置や受光装置を備える。本体の周囲約5m以内にある物体に光を当て、生じた反射波が戻るまでの時間を測定して距離を計測し、1秒で点群データを取得する。屋内空間の点群データを数メートルおきに取得することで、自動でつなぎ合わせて地面や壁、天井、設備の形状を3次元のデジタル空間上に再現する。360度の7K画像も同時に撮影できる。
一般的な3次元レーザースキャナーは点群データをミリメートル単位の精度で取得できる一方、計測時間がかかるうえに大型で1台当たり数百万円と高額のものが多い。試作機では点群データの取得精度を数センチ程度に許容して、動作速度の向上と小型軽量化を図る。計測範囲も周囲360度と広い。スマートフォンには点群データを取得するLiDARセンサーを搭載した機種もあるが、計測範囲が狭いため手間がかかるうえに計測の抜けや漏れも起こりやすい。一脚に取り付け、歩いて持ち運びながら空間の3次元情報を取得する使い方を想定している。
建設の施工管理や設備点検の現場の多くでは一般に、技術者が2次元の図面を基に確認手順や資機材の運搬計画を検討する。熟練の技術が必要だ。建設業界で人手不足が深刻化するなか、熟練者でなくても現場の空間情報を適切に取得・整理できる技術の需要が高まっている。
リコーは点群データの取得技術と並行して、3次元情報を閲覧するビューワーや解析するAI(人工知能)も開発する。例えば、特定の機材をカウントして管理台帳とひも付けたり、大型設備を搬出入する際の経路上に障害がないかを判定したりする作業をAIで省力化する。日々変化する現場の「デジタルツイン」を手軽に作成・運用できるサービスを提案する考えだ。