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 竹中工務店と日本製鉄は鉄骨造の耐火建築物で、鉄骨小梁(こばり)の耐火被覆が不要になる設計技術を開発し、2つのプロジェクトに適用した。プロジェクトは非公表だが、いずれも国内の中高層複合ビル。オフィス部分にのみ適用した。2023年2月28日に発表した。

竹中工務店と日本製鉄は鉄骨造の耐火建築物で、鉄骨小梁(こばり)の耐火被覆が不要になる設計技術を新たに開発した(出所:竹中工務店、日本製鉄)
竹中工務店と日本製鉄は鉄骨造の耐火建築物で、鉄骨小梁(こばり)の耐火被覆が不要になる設計技術を新たに開発した(出所:竹中工務店、日本製鉄)
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 竹中工務店による実大試験体の実験と、日本製鉄が持つ数値解析技術で耐火性能を確認し、共同で設計技術を検討してきた。そして今回、一部の鉄骨小梁に耐火被覆をしない耐火建築物として、国内で初めて国土交通大臣の認定を取得した。

 今回の設計技術が対象とするのは、鉄骨の大梁と小梁、縦横に鉄筋を組んだコンクリートスラブで構成する床システムだ。建設資材を減らしたり、工期を短くしたりするのが狙い。従来の設計技術に比べて、床システムに施工する耐火被覆の面積を最大約70%減らせる。今回の2つのプロジェクトでは25~30%減らした。

 耐火被覆は火災発生時に、鋼材の温度が上昇するのを防ぐ。鋼材は不燃材料だが、高温になると軟化する性質がある。400℃で強度が3分の2程度に、1000℃を超えると強度が期待できなくなる。火災の熱で鉄骨梁の強度が低下すると、梁で支えたコンクリート床スラブがたわんでしまう。

 新技術では、このたわみを逆手に取っている。スラブがたわむと、内部鉄筋に鉛直方向の成分を持った引張力が生じる。この力で梁の強度の低下分を補う。つまり、熱で梁の強度が低下しても、スラブを含めた床システム全体では、荷重の支持性能を十分に確保できるというわけだ。従来の設計に比べて、内部鉄筋の本数を増やしたり、径を太くしたりはしておらず、スラブの厚さも変わらない。

火災の熱で鉄骨小梁の強度が落ちても、床スラブがたわんで内部鉄筋に引張力が生じるため、床システム全体の荷重支持能力は保たれる(出所:竹中工務店、日本製鉄)
火災の熱で鉄骨小梁の強度が落ちても、床スラブがたわんで内部鉄筋に引張力が生じるため、床システム全体の荷重支持能力は保たれる(出所:竹中工務店、日本製鉄)
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