建設業界で賃上げの表明が相次いでいる。大手建設会社5社では大林組と鹿島が2023年3月初旬までにベースアップ(ベア)や定期昇給による賃上げを発表した。清水建設と竹中工務店も賃上げを予定している。
大林組は23年3月3日、23年度に従業員の賃金を前年度比で平均約6%引き上げると明らかにした。定期昇給に加え、月額約2万円のベアを実施する。初任給も大学卒・大学院卒ともに5000円引き上げ、大卒は25万円、大学院卒は27万円とする。同社のベアと初任給の引き上げは2年連続だ。
鹿島は23年2月14日、平均約5%の賃上げを検討すると発表した。同社も定期昇給とベアを想定している。同社広報室によると、初任給の引き上げも検討中だ。
他の大手建設会社でも今後、賃上げの動きが出てきそうだ。竹中工務店は日経クロステックの取材に対し、「ベアを実施する予定だ。引き上げ額は社会動向や経営状況を踏まえ、遅くとも23年4月3日までには決定する見通し」(同社広報部)とする。清水建設も「ベアを含む賃上げを実施する方向で協議を進めている」(同社コーポレート・コミュニケーション部)とした。
建設会社の賃上げ表明は22年春にも相次いだ。この時は政府が導入した賃上げ企業への優遇策が契機となった。従業員の平均年間給与を大企業で3%以上、中小企業で1.5%以上引き上げると表明すれば、総合評価落札方式による入札で加点を受けられる仕組みだ。大手5社は足並みをそろえ、22年度に3%以上の賃上げを実施した。
一方、各社が23年度の賃上げの理由として挙げるのは、「物価上昇への対応」だ。鹿島広報室は、「加点制度も23年度の賃上げの背景ではあるが、主因ではない」とする。実際、大林組と鹿島が発表した賃上げ率は22年度よりも高く、加点制度の最低基準を2~3ポイント上回る。
堅調な業績も背景にある。上場大手建設会社4社が23年2月中旬までに発表した、23年3月期の業績予想(単体)によると、4社とも23年3月期の建築の売上高と営業利益が前期実績を上回る見通しだ。大林組の営業利益は、前期に採算が悪化した反動で前期を460億円超上回る510億円。鹿島は前期比1.1%増の820億円と予想している。