「過去何十年、あまりに多くの建物が人の心に関心を払わず建てられてきた。それに対し、我々が目指してきたのは、誰もが思い入れを持てるような建築をつくることだ」。世界各地でプロジェクトを手掛ける英国のデザイナー、トーマス・ヘザウィック氏は2023年3月16日、東京・六本木ヒルズ森タワーで開いた記者会見で、力強く語った。
ヘザウィック氏が1994年に英ロンドンで立ち上げたデザイン事務所ヘザウィック・スタジオ。国内初となる同社の展覧会が2023年3月17日、六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビュー(屋内展望台)で始まった。会期は23年6月4日までだ。
東京都心の街並みを一望できる展示室で、ヘザウィック・スタジオがこれまで手掛けてきた建築やプロダクトなど、主要28プロジェクトを紹介する。建築写真や図面が天井からのれんのように垂れ下がり、その下に思わずのぞき込みたくなる大型の建築模型が所狭しと並ぶ。展示デザインはヘザウィック・スタジオが担当した。
本展のタイトルは、「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」。文字通り、「魂」や「感情」がテーマだ。ヘザウィック氏は子どもの頃、職人がつくった小さな物に宿る“魂”に心を躍らせていたという。キュレーションを担当した森美術館の片岡真実館長は、「大きな建築や都市にも、この“魂”を込められるかという問いが、ヘザウィック・スタジオのデザインの原点になっている」と話す。