全1974文字
PR

 清水建設、鹿島、大林組、大成建設の2023年3月期決算(単体)が23年5月15日までに出そろった。旺盛な建築需要を背景に、上場大手建設会社4社の建築の売上高と受注高はおおむね好調だった。22年12月に決算期を迎えた竹中工務店を含め、スーパーゼネコン5社の建築売上高はいずれも増収。上場大手4社は全て1兆円を超えた。一方で、資材価格の高騰が各社の利益を圧迫した。

 最も売り上げの伸びが大きかった清水建設は、前期比27.1%増の1兆1895億円だった。主な竣工物件は地上48階建ての「東急歌舞伎町タワー」(東京・新宿)や地上25階建ての「福岡大名ガーデンシティ」(福岡市)などだ。

スーパーゼネコン5社の2022年度決算(単体)の概要。竹中工務店のみ22年12月期。竹中工務店の完成工事総利益率(建築)は、建設事業全体の値を示した。金額の表記は1億円未満を切り捨てて表記した。図中のカッコ内は対前期増減率(%)で、▲はマイナス。完成工事総利益率のみ、カッコ内は増減ポイント(出所:各社の決算短信などを基に日経クロステックが作成)
スーパーゼネコン5社の2022年度決算(単体)の概要。竹中工務店のみ22年12月期。竹中工務店の完成工事総利益率(建築)は、建設事業全体の値を示した。金額の表記は1億円未満を切り捨てて表記した。図中のカッコ内は対前期増減率(%)で、▲はマイナス。完成工事総利益率のみ、カッコ内は増減ポイント(出所:各社の決算短信などを基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 建築受注高も堅調だ。スーパーゼネコン5社では鹿島、竹中工務店、大成建設の3社が前期よりも受注高を伸ばした。清水建設は前期比0.3%減、大林組は同6.4%減となったものの、全社が1兆円を超えた。

 受注を最も大きく伸ばしたのは鹿島で、前期比25.0%増の1兆1028億円だった。半導体大手キオクシア(東京・港)の四日市工場など、製造業からの受注が寄与した。同社における工場の受注高は前期比119.1%増の5126億円。建築受注高の46.5%を占める。

 同社経営企画部コーポレート・コミュニケーショングループの戸村武夫グループ長は、「工場の底堅い需要は当面続くだろう」と話す。同社は工場を建設事業の重点分野の1つに掲げており、今後も積極的に取り組んでいく考えだ。23年4月25日には、次世代半導体の国内製造を目指すRapidus(ラピダス、東京・千代田)が北海道千歳市で計画している半導体工場の設計・施工を受注したと発表した。

 売上高と受注高がおおむね好調だった一方、利益は軒並み厳しかった。スーパーゼネコン5社では清水建設、竹中工務店、大成建設の3社が営業減益。資材高騰が利益を押し下げた。

 建築工事の採算性を表す完成工事総利益率(粗利率)を見ると、トップは鹿島で前期比1.8ポイント減の8.5%。同社の戸村グループ長は、「22年度の資材高騰の影響は、期初予想の範囲内だった」と話す。リスクを織り込んだ受注活動や資材の早期発注、ロボットなどを活用した生産性向上によって大崩れを防いだ。

スーパーゼネコン5社の建築工事の完成工事総利益率(粗利率)の推移。2023年度は予想。竹中工務店の数値は建設事業全体の値を示した。19年度までは各社とも10%以上で推移していた(出所:各社の決算短信などを基に日経クロステックが作成)
スーパーゼネコン5社の建築工事の完成工事総利益率(粗利率)の推移。2023年度は予想。竹中工務店の数値は建設事業全体の値を示した。19年度までは各社とも10%以上で推移していた(出所:各社の決算短信などを基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 次いで大林組の8.3%。同社は前期に複数件の大規模工事で工事損失引当金を計上した反動で、前期比4.7ポイント増となったものの、コロナ禍以前の水準には及ばない。

 大成建設の粗利率は前期比4.9ポイント減の3.6%に落ち込んだ。営業利益は前期比44.7%減の416億円だった。札幌市で施工中の超高層ビルで鉄骨の精度不良が発覚し、約240億円の損失を計上したことが響いた。同社管理本部の中野雄一経理部長は、「施工不良による損失は23年3月期の決算で全て吸収した。24年3月期以降に大きな影響は出ない。受注への影響も今のところは出ていない」と話す。

大成建設管理本部の中野雄一経理部長。札幌市内の超高層ビル現場における施工不良は、24年3月期以降の決算に大きな影響を及ぼさないと強調した(写真:日経クロステック)
大成建設管理本部の中野雄一経理部長。札幌市内の超高層ビル現場における施工不良は、24年3月期以降の決算に大きな影響を及ぼさないと強調した(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]