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 主要施設の建築工事で入札の不落・不調が続いていた大阪・関西万博で、落札者がようやく決まり出した。「大催事場」は3回目の入札で大成建設・昭和設計が71億1600万円、テーマ事業プロデューサーの1人である河瀨直美氏のテーマ館(シグネチャーパビリオン)、「いのちを守る」は2回目で、村本建設・SUO・平岩構造計画・総合設備グループが15億7000万円でそれぞれ落札した。2023年5月17日に、2025年日本国際博覧会協会が明らかにした。

 これで「小催事場」「迎賓館」に加え、合計8つのテーマ館のうち入札を実施した6つのパビリオンで、4つは落札者が決定した。23年6月から実施設計や建設工事に順次着手する。

メイン施設の落札結果

施設整備事業基本設計延べ面積実施設計・建設工事・工事監理・撤去工事など落札価格(税別)工期
大催事場伊東豊雄建築設計事務所約8400m2大成建設・昭和設計71億1600万円(舞台設備工事を含む)2023年6月~27年2月
小催事場安井建築設計事務所・平田晃久建築設計事務所JV約4500m2鴻池組・安井建築設計事務所・平田晃久建築設計事務所グループ38億7900万円(物品賃貸借を含む)2023年1月~27年2月
迎賓館日建設計約4500m2大林組・矢作建設工業JV、日建設計34億137万4000円2023年3月~27年2月
2023年5月17日時点で公表されている契約情報を基に、日経クロステックが作成(出所:日経クロステック)

テーマ館(シグネチャーパビリオン)の落札結果

施設整備事業建築デザインなど延べ面積実施設計・建設工事・工事監理・撤去工事落札価格(税別)工期
テーマ館「いのちを知る」福岡伸一PNHA(旧・橋本尚樹建築設計事務所)約928m2鹿島・NHAグループ14億890万円2023年3月~27年2月
テーマ館「いのちを育む」河森正治P小野寺匠吾建築設計事務所約974m2鹿島・小野寺匠吾建築設計事務所グループ10億9110万円2023年3月~27年2月
テーマ館「いのちを守る」河瀨直美PSUO約1500m2村本建設・SUO・平岩構造計画・総合設備グループ15億7000万円2023年6月~27年2月
テーマ館「いのちを響き合わせる」宮田裕章PSANAA約213m2大林組・総合設備コンサルタントグループ14億5400万円2023年5月~27年2月
テーマ館「いのちをつむぐ」小山薫堂P隈研吾建築都市設計事務所約1551m2予定価格の範囲内での応札者なし
テーマ館「いのちを磨く」落合陽一Pnoizなど約1567m2予定価格の範囲内での応札者なし
2023年5月17日時点で公表されている契約情報を基に、日経クロステックが作成。表中の「P」は、テーマ事業プロデューサーの略。石黒浩氏と中島さち子氏のテーマ館は入札を実施していない(出所:日経クロステック)
建築工事の区画割図(出所:2025年日本国際博覧会協会)
建築工事の区画割図(出所:2025年日本国際博覧会協会)
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 一方で、同年5月になっても、いまだに落札者が決まらないテーマ館が2つある。「いのちをつむぐ」を担当する小山薫堂氏と、「いのちを磨く」を担当する落合陽一氏の2人がテーマ事業プロデューサーを務めるパビリオンである。

 22年12月に入札の不落・不調が伝えられ始めてから、はや半年がたとうとしている。それでも2つのテーマ館は実施設計や建設工事の着手にめどが立っていない。突貫工事で進めざるを得ない事態が現実味を帯びてきた。残業時間の上限規制が建設業にも適用になる「2024年問題」と、施設建設工事の時期がかなり重なるのは確実だ。

 小山氏のテーマ館は2回目の公告で、延べ面積を約160m2減らしたうえで予定価格を1回目よりも約3億円増やし、12億6228万6700円とした。それでも予定価格の範囲内での応札者は現れなかった。現在、3回目の公告を準備している。

 落合氏のほうは23年5月に、2回目の公告を出したところだ。予定価格を1回目の約2倍に当たる、11億8093万2000円まで引き上げた。今のスケジュールではどんなに早くても、同年7月から実施設計と建設工事を始める日程になる。なお、テーマ館と隣接する万博会場中央部の「静けさの森」の植栽工事と建設工事は、最初の公告が出た。

新たな公告

施設整備事業延べ面積実施設計・建設工事・工事監理・撤去工事の予定価格工期(予定)
テーマ館「いのちを磨く」落合陽一P約1526m211億8093万2000円2023年7月~27年2月
静けさの森約2.3ha(面積)15億2880万円(植栽工事と建設工事)2023年7月~27年2月
2023年5月17日時点で公表されている契約情報を基に、日経クロステックが作成した。表中の「P」は、テーマ事業プロデューサーの略(出所:日経クロステック)