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 グーグルも同様の制裁を受けた。同社がApple Developer Enterprise Programを使って配布していたのは「Screenwise Meter」というアプリだ。消費者モニターにギフト券を提供する見返りにこのアプリをインストールさせて、スマホ上のさまざまなアプリの利用状況などに関するユーザーデータを収集していた。アップルはグーグルのデジタル証明書も無効にした。

 最終的にフェイスブックとグーグルは問題のアプリをApple Developer Enterprise Programで配布することをやめ、制裁は2~3日で解除された。

ユーザーの健康データでビジネスするアップル

 今回の制裁はフェイスブックとグーグルがApple Developer Enterprise Programの規約を破ったことが名目となっている。お金を払ってユーザーからデータを集めることや、集めたデータを活用してビジネスすること自体は否定していない。むしろアップルはユーザーデータを活用するビジネスを振興するスタンスですらある。

 米ドラッグストアチェーン大手のCVSヘルス(CVS Health)傘下にある米医療保険大手のエトナ(Aetna)は2019年1月29日(米国時間)、アップルとの提携を発表。アップルのスマートウオッチ「Apple Watch」を使ってユーザーの健康状態を日々計測し、健康増進の目標を達成するとギフトカードなどのリワード(報酬)が得られるサービス「Attain」を提供するとした。

 Apple Watchが搭載するセンサーはユーザーの動きや心拍数、さらには心電図まで取得できる。エトナはApple Watchによって収集したデータを元に、ユーザーに最適な健康増進プランや治療プランを提示するとしている。AttainのユーザーにApple Watchを無償提供することもある。

 エトナのAttainアプリが収集するユーザーデータは、フェイスブックやグーグルが集めようとしていたデータとは別次元で重要だ。オンラインどころか現実世界におけるユーザーの行動だけでなく、健康に関する情報までも分かってしまう。

 このようにアップルは、恐ろしく重要なユーザーデータを収集できるApple Watchを販売し、提携パートナーが重要データを活用するビジネスができるよう取り計らっている。だからこそアップルは、プライバシー保護に口やかましくなっているのだ。

アップルが恐れる最悪のシナリオ

 アップルとしては、お行儀の悪い会社が従来のオンライン上にあるデータと同じ感覚で健康データを収集し、大規模なプライバシー侵害を引き起こすことを危惧しているのだろう。仮に大事故が起こって健康データの収集そのものが禁止されるようなことがあれば、Apple Watchが切り開くはずだったビジネスの機会が失われてしまう。

 グーグルは既に医療市場に参入し「血糖値を計測できるスマートコンタクトレンズ」などを発表しているにもかかわらず、ユーザーのプライバシーをないがしろにする行動を見せている。アップルにとってグーグルは、恐ろしく危うく見えていることだろう。アップルがグーグルやフェイスブックと繰り広げるプライバシー保護を巡るバトルは、今後さらにヒートアップしそうだ。