GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)に対する批判が米国で高まる一方だ。2019年3月にはついに米民主党の有力政治家が「GAFA分割論」を訴え始めた。GAFAを取り巻く現状は、20年前の米マイクロソフト(Microsoft)と酷似している。
2020年の米大統領選挙に向けた公約としてGAFAの会社分割を主張するのは、民主党のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員だ。2019年3月8日(米国時間)にブログを公開し、テクノロジー業界における競争促進のために、GAFAの力を弱める必要があると主張した。
当初、ブログでターゲットとしていたのは米アマゾン・ドット・コム、米グーグル、米フェイスブックの3社だったが、ウォーレン上院議員は翌日のインタビューで米アップルも追加。同議員の主張はひとくくりにGAFA分割論として米国では認識されている。
競合買収の取り消しとプラットフォーム分離を主張
ウォーレン上院議員は2つの方法でGAFAを分割すると主張している。1つはGAFAが過去に実施した競合企業の買収の取り消し。もう1つはGAFAが提供する「プラットフォーム」の本体からの分離だ。
ここで言うプラットフォームとは、第三者が物品やサービスを売買したり、ユーザーとやり取りしたりする場のことである。アマゾンであれば第三者が商品を販売できる「Amazonマーケットプレイス」が、グーグルであればオンライン広告を出稿できる「Google検索」やアプリケーションのマーケットプレイスである「Google Play ストア」などがそれぞれ該当する。
ウォーレン上院議員は、GAFAがプラットフォームを提供すると同時に、自らもそこでビジネスを営んでいることが問題だと批判する。自社を有利に扱うことで、そこに参加する第三者のビジネスを阻害しているとの主張だ。
例えばアマゾンは、Amazonマーケットプレイスで売れ行きの良い商品があったら、それをまねして自社のプライベートブランド(PB)商品を作っているのではないかとの批判がある。グーグルに関しても、Google検索のランキングを調整して他社の検索エンジンを見つけづらくしているといった批判が出ている。
ウォーレン上院議員はこうした状況を改善するために、競合の買収やプラットフォームに対する規制が必要だと主張する。同議員の提案によると、年間売上高が250億ドル以上でプラットフォームを提供する企業を「プラットフォーム公益事業者(Platform Utilities)」として規制し、自社が提供するプラットフォームにプレーヤーとして参加できなくする。
具体的には、アマゾン本体とAmazonマーケットプレイスを、グーグル本体とGoogle検索やGoogle Play ストアを、アップル本体と「App Store」をそれぞれ分離する。ウォーレン上院議員が言う公益事業者(Utilities)とは、電力やガス、水道、交通といった公共性の高いサービスを提供する事業者のことである。こうした産業は日本でも「規制産業」と呼ばれる。プラットフォームも規制産業にしようというのが、同議員の主張だ。