データセンターでは日々、ユーザー企業の情報システムが稼働し業務データを処理している。大事なIT資産を保管しているデータセンターは、堅牢な施設だというイメージは大半の人がお持ちだろう。では具体的にはどのような設備があり、どれほどの安全性や可用性が確保されているのか。データセンターは全国津々浦々にあるが、事業者ごとの特性があるのかどうか。
記者はデータセンター大手エクイニクス・ジャパンのTY5 東京 IBX データセンター(以下、TY5)に潜入取材する機会を得た。取材を通してデータセンターの災害対策や特色について考えてみた。
立地についての懸念に答える
エクイニクス・ジャパンは東京都内にTY1~TY10の10カ所のデータセンターを持つ。TY5はその1つで、2016年に開設した。場所は東京都江東区、有楽町線豊洲駅から徒歩圏にある。データセンターの規模は一般的にラック数で表す。TY5は725ラック規模だ。2000ラック超のデータセンターもあるので小規模なほうだと言える。
徒歩で3分もかからないところに同社のTY3 東京 IBX データセンター(TY3)があり、TY5とダークファイバ―で接続されている。このダークファイバ―を使う接続サービスを利用すると、TY3とTY5は同一のLANとして利用できる。
海が近いという土地柄、水害対策の内容が気になる人もいるだろう。
IBXオペレーションズの齋藤晶英ディレクターは、データセンターの浸水をもたらす要因は津波、高潮、洪水だと指摘する。このうち津波と高潮への備えについて「東京湾で想定される津波の最大の高さはAP(Arakawa Peil:荒川工事基準面)+3.6メートルとされている。TY5はAP+4.0メートルの内部護岸と、AP+5.8~8.0メートルの防潮堤で2重に囲まれた場所にある」と説明する。この囲いによって、水害の影響を受けにくいというわけだ。
洪水に関しては、区の東側を流れる荒川、西側を流れる墨田川、および江東内部河川(荒川、隅田川、臨海地区に囲まれた江東三角地帯を流れる11河川)流域が氾濫した場合に備える必要がある。この点に関しては、仮に200年に1回程度起こりえる大雨で荒川の堤防や荒川の下流域の堤防が決壊しても、TY5付近は浸水しないとされているという。
さらに同社はTY5の建物の入り口と1階の間に上り階段を設けている。そのため建物前の道路とTY5の1階では2メートル近く高さが違う。海も川も近いが、水害を受けにくい立地にあると言えるだろう。
地震対策に関しては、TY5は震度6強以上の耐震構造になっており、基礎杭を深さ69メートルの地中に固定している。TY5がある地区は軟弱地盤が40メートルまであるため、その下の安定地盤まで杭を打って建物を安定させているとのことだ。