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 菅義偉首相の看板政策となった「デジタル庁」創設を柱とする法案が現在、衆議院で審議中だ。2021年9月の創設に向け、急ピッチで準備が進む。組織は民間から人材を登用するとし、早くも「デジタル人材」を引き付けている。

 デジタル社会を推し進めるためのシステム基盤や制度を整える役割を担うのがデジタル庁になる。中央官庁が調達・運用するシステムについて各省庁に方針を勧告するなど「強力な総合調整機能」を持つほか、重要なシステムを自ら整備する役割がある。全国規模のクラウド移行に向けた標準化を進めたり、マイナンバー制度全般の企画立案を一元化したりとその業務は多岐にわたる。

 デジタル庁はどんな組織なのか、どう機能するのか、何を予定しているのか。何が変わるのか。ワンストップで理解を深めるための「10の疑問」としてまとめた。

Q1:デジタル庁とは何か。何をするところか?
Q2:デジタル庁はどんな組織か?
Q3:デジタル庁の準備は誰がリードしているのか?
Q4:行政システムは新しくなるのか。デジタル庁は関与するのか?
Q5:デジタル庁はマイナンバーを推進していくのか?
Q6:デジタル庁というからには、仕事の仕方は変わるのか?
Q7:デジタル庁には民間人から登用されるポストがあると聞く。どんな役割か?
Q8:霞が関で「デジタル人材」が引っ張りだこらしいが本当か?
Q9:デジタル庁設置を含む法整備にはどんな経緯があったのか?
Q10:国民は、デジタル庁に何を期待すればいいのか?

Q1:デジタル庁とは何か。何をするところか?

 「複数の省庁に分かれる関連政策を取りまとめて強力に進める体制として、デジタル庁を新設いたします」。2020年9月16日に内閣総理大臣就任後初の記者会見で、菅義偉首相は新型コロナ対策と経済の再生を重要事項として述べた後、そう明言した。焦点は主に3つ。「IT調達予算の一元化」「政府内外から必要なIT人材を登用できる人事権限」「システム開発の内製化」――である。

Q2:デジタル庁はどんな組織か?

 デジタル庁のトップは首相である。「デジタル庁長官」というポストは実は存在しない。復興担当大臣がいる復興庁と同様にデジタル大臣がいる。庁全体で約500人規模になる。

 政府は内閣情報通信政策監(政府CIO)の後継となる特別職のデジタル監や職員の2割を企業など民間から採用する方針だ。

Q3:デジタル庁の準備は誰がリードしているのか?

 平井卓也デジタル改革相だ。日経クロステックの取材に対し「日本は過去のインフラ投資やIT戦略が全く役に立たなかった。『敗戦』以外の何物でもありません」と新型コロナ対策の“デジタル敗戦”を認める。「デジタル庁ではそれらを全て国民起点に書き換える」とし、「規制改革の象徴であり成長戦略の柱。(行政DXの)主戦場は、政府系システム、重要インフラのシステム、国民がよく使うであろう行政サービス、自治体との連携など」になると話す。

Q4:行政システムは新しくなるのか。デジタル庁は関与するのか?

 答えはイエスだ。中央省庁に加えて地方自治体や独立行政法人など公的機関も共同利用する、空前規模のクラウド基盤構想「Gov-Cloud(仮称)」がある。自治体システムの大幅なコスト低減を後押しできるとされるGov-Cloudは、デジタル庁が構築・運用を担当する。この構想は早ければ2022年度の一部運用開始を目指し動き出す。2021年2月に閣議決定された法案(3月9日に審議入り)には、自治体に対し「政府が提供するクラウドコンピューティング環境を利用するよう努力する義務」も盛り込む。ただ移行期間を巡っては困難だとする声も地方から上がっている。