文部科学省は2019年3月29日、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策 中間まとめ」を発表した。公立学校のICT環境整備が思うように進まない中、新たな施策として、市区町村ごとの整備状況や地方財政措置等の「見える化」を推進、調達コストを低減する具体的なモデルを提示、SINETの初等中等学校への開放などを示した。
調達コストを低減するモデルの中には、「1台5万円弱から」のコンピューターという記載がある。これは、4万~6万円と低価格なChromebookを強く意識した表現だ。これまで初等中等教育で使う学習者用コンピューターといえばWindowsパソコンか「iPad」がほとんどだったが、この1~2年でChromebookの存在感が増している。特に、2018年度には公立学校での採用が急増した。こうした状況の中、いち早くChromebookの導入に踏み切った自治体が埼玉県だ。
埼玉県は2010年から、協調学習を軸にした主体的・対話的で深い学びを目指す「学びの改革」に取り組んでいる。それを効率的に実践する手段の一つとしてICT活用にも着手し、2016年度からASUS JAPANのChromebookを使って2年間の検証事業を実施した。2018年度には県立高校35校に対して、レノボ・ジャパンの「500e Chromebook」を44台ずつ配備し、本格的なICT活用を始めている。
埼玉県教育局県立学校部高校教育指導課 学びの改革担当 指導主事の高井潤氏は、Chromebookを選んだ理由について、「低価格であることも魅力でしたが、端末管理の負担が軽減されるメリットの方が大きかったです」と語る。
Chromebookはグーグル(Google)の管理ツールを使えば、全ての端末を一元管理できるため、現場の教員はOSのアップデートやアプリのインストール、設定の変更などに手間を取られずに済む。そのうえ、クラウド上のアプリやサービスを使うため自前のサーバーは不要で、管理ツールも一度購入するだけなので、長期的なコスト削減にもつながる。
ICT支援員の配置が難しい自治体であっても、Chromebookであれば現場の教員の負担を抑えつつ、導入台数を増やしやすいこともメリットだ。また、埼玉県では2013年から県立高校と特別支援学校の教員を対象に、校務のためにGoogleアカウントを付与していたことも後押しした。
現場の教員が支持した
とはいえ、これまでWindowsパソコンに親しんできた教員たちは、Chromebookの導入に抵抗感が無かったのだろうか。この点について高井氏は「検討段階で教員らに意見を求めたところ、意外にもChromebookの方が評価は高かった」と話す。中でも現場で端末管理やトラブル対応を担う教員たちから、Chromebookを支持する声が多く集まった。それに加え、協調学習を軸にICT活用を進めてきた埼玉県では、協同作業や協調的な学びを実現するツールであれば、Windowsに限定しなくともよいとの声も上がったという。