プログラミング言語「Python」のカンファレンス「PyCon US 2022」が、3年ぶりにリアル開催イベントとして戻ってきた。
2020年と2021年は米国のピッツバーグで同時期に開催を予定していた。しかし、2020年は直前に方向転換してビデオを集める形になり、2021年はオンライン形式でのカンファレンスになった。
新型コロナウイルスの感染が収束しない中、「どのようなイベントになるのか」「パンデミックによるコミュニティーの変化はないか」と気になることが多かった。特にコミュニティーの変化やPythonソフトウエア財団(PSF:Python Software Foundation)の現状を、渡米し実際に会って話すことで知りたかった。
結論としては、部分的にオンラインにシフトしているがリアルなイベントも復活しつつあり、コミュニティーの継続性が確保されていた。こうした継続的なコミュニティーへの期待がより高まっているとも感じた。PSFやPythonのコア開発者は一部が入れ替わっており、この2年間でより良い循環が起こっていた。
筆者はPythonを使ったWebシステム開発やPython関連のコンサルティングを手がけるCMSコミュニケーションズという企業を経営している。同時に国内最大級のPythonイベントである「PyCon JP」を開催する一般社団法人「PyCon JP Association」の代表理事を務めている。またPython人材の育成を支援する一般社団法人「Pythonエンジニア育成推進協会」の顧問理事でもある。
こうした立場から、Pythonの中心地である北米ではどのようにコミュニティーやPythonの将来がとらえられているかが気になっていた。実際に行ってみると、大きな状況の変化はなく、「適切な方向に進化している」という感想を持った。
ここで、PyConについて簡単に説明しておこう。名称は「Python Conference」を略したもの。講演やポスター発表、トレーニング、開発イベントなどを通じて、Pythonを利用してソフトウエアを開発するエンジニアが最新の情報を共有するイベントだ。
今回で20回目の開催となる。近年は2年ごとに開催都市を移しており、2022年はユタ州ソルトレークシティーで開催された。ソルトレークシティーは、2002年冬季オリンピックの開催地として都市名を覚えている人が多いかもしれない。中西部の地方都市だが、治安が良くダウンタウンがこぢんまりしているので、歩いて行動できた。ライトレール(路面電車)が空港からダウンタウンまで走っている珍しい都市でもある。
なお、PyConは世界50カ国以上で同名のカンファレンスが開催され、日本だと「PyCon JP」といったように地域名が入る。米国で開催されるPyConには地域名を入れないことが多かったが、近年は「PyCon US」という名称になっている。