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 「医療やヘルスケア分野へのビジネス参入を検討せよ」――。上司から指令を受けたあなたは法規制の壁にぶち当たっていないだろうか。医療やヘルスケア分野に関する法律は「医師法」「医薬品医療機器等法(薬機法)」「医療法」「薬剤師法」「保健師助産師看護師法」「健康保険法」「健康増進法」「臨床研究法」「景品表示法」「個人情報保護法」など多岐にわたる。

 これらの法律はビジネス参入するには避けて通れない壁だ。しかしこの壁は新規参入者にとってなかなか高く、頭を悩ませる。そこで今回、医療ヘルスケア分野に関する法律の基本的な考え方や運用で注意すべき点を検討したい。法律の考え方が分かれば、通知やガイドラインもぐっと読みやすくなるはずだ。

(出所:123RF)
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 「我々が考えているサービスの目的は健康増進だ。医療分野ではないのでそこまで法律は意識していない」との声を聞くことがある。しかしこの考え方は危険だ。健康増進などヘルスケア分野においても運用次第では医師法や薬機法上の問題として該当することがあるため注意が必要となる。

 一方で、通知やガイドラインを過剰に解釈してビジネスチャンスを逃している企業もあると思われる。法令順守のために必須の作業なのか、ガイドライン上で推奨される作業なのかを正しく判断できるようになれば、新しいビジネスの可能性がより広がるだろう。

まずは「医師法」に適合しているかを確認

 検討中の事業が適法かどうか、まず確認すべき法律が「医師法」だ。医師法は医師の資格や業務などについて定めている。中でも医師法17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」は、医療分野だけではなくヘルスケア分野の事業においてもしばしば適法かどうかの判断に関わる。ちなみに医業とは「医行為を反復継続する意思をもって行うこと」と解釈されている。

 それでは医行為は何を指すのか――。医行為は「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」(平成17年7月26日医政発0726005号厚生労働省医政局長通知)、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」(最判昭和30年5月24日刑集9巻7号1093頁、最判平成9年9月30日刑集51巻8号671頁)などとされている。

 しかし、これを読んでも医行為の定義がはっきり分からないと感じる読者が多いのではないだろうか。実はこれには訳がある。医療の危険性は時代とともに変わってくるので一律に決めるべきでないと考えられているのだ。今後、医行為の解釈は時代とともに変わる可能性があるが、現状では一般的に、「診断」や「医薬品の処方」「注射」「手術」「放射線照射」「採血」などが医行為とされている。