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 Windows環境をクラウドで利用できるサービス「Windows 365」が2021年8月2日に提供開始された。米Microsoft(マイクロソフト)が2021年7月14日、同社開催のイベントInspire 2021で発表したばかりのサービスだ。今回は、Windows 365の使い方やパフォーマンスなど検証して分かったことを紹介しよう。

Windows 365の公式ページ。Windows 365の試用版は利用率が高く、2021年8月3日には試用版の提供を一時的に停止する旨のメッセージが表示された。通常のライセンス販売は継続している
Windows 365の公式ページ。Windows 365の試用版は利用率が高く、2021年8月3日には試用版の提供を一時的に停止する旨のメッセージが表示された。通常のライセンス販売は継続している
(出所:米Microsoft)
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Windows 365の利用料金はユーザー単位で月額固定

 Windows 365は月額固定の料金で利用できる。一般的なクラウドの仮想マシンでは使用時間に応じた従量課金が適用されることが多いが、Windows 365ではユーザー単位で決められた金額を支払えば使用時間にかかわらず同一の料金となる。このため、予算の見通しを立てやすく、常時利用するユーザーにとってはコストメリットが大きくなる。

 Windows 365 BusinessとWindows 365 Enterpriseという2種類のプランが用意されている。このプランや仮想マシンのスペック(CPU、メモリー、ディスク)によって月額の利用料金が変わる。

 Windows 365 Businessは、中小規模の企業向けのプランだ。このプランはWindows 365 Businessのライセンスだけで利用できる。利用環境を準備しやすく、すぐに利用を開始できる。ただしユーザー数に制限があり、最大300人までとなっている。

 一方のWindows 365 Enterpriseは、大規模企業向けのプランだ。利用するには、Windows 10 Enterprise E3などいくつかのライセンスを別途用意しなければならない。また、マイクロソフトのパブリッククラウドAzure上に環境を構築する必要があるなど、前提となる要件があるので利用前に確認しておく必要がある。ただし、Windows 365 Businessのようなユーザー数の制限はない。

 Windows 365は月額固定料金だが、ネットワークの利用においては制限や追加の料金が発生する。これらの制限や料金はプランによって異なる。

 Windows 365 Businessではネットワーク利用料はかからないが、仮想マシンから外向けへの通信においてデータ量に制限がある。最小スペックの構成では、ユーザー単位で月当たり12GBまでとされている。大容量のファイルを外部のサービスにアップロードするときなどには注意が必要だ。

 Windows 365 Enterpriseでは、Azure上に仮想ネットワークなどの環境を構築する必要がある。このため、それに応じたAzureの利用料金が発生する。また、仮想マシンとの通信は仮想ネットワークを通過するため、Azureで決められた通信にかかる料金も発生する。通信にかかる料金は低く設定されているが、外部と大量のデータをやりとりするような場合などはあらかじめ試算しておいたほうがよい。

Windows 365 Enterpriseの利用にはIntuneやAzure ADが必要

 Windows 365 Enterpriseを利用するには、Windows 10 Enterprise E3とMicrosoft Intune、Azure Active Directory Premium P1などのライセンスが必要になる。詳細についてはマイクロソフトのリセラーに確認していただきたい。これらのライセンスは、Microsoft 365の企業向け各プランに含まれている。このため、Windows 365 EnterpriseはMicrosoft 365の企業ユーザーを対象としたサービスであると考えられる。

 またWindows 365 Enterpriseの利用には、ライセンスだけでなくAzure上に要件に定められた環境を構築しておく必要がある。

 まず、Windows 365の仮想マシンを配置するための仮想ネットワークを作成する。仮想マシンをオンプレミスのActive Directoryへ参加できるようにするため、仮想ネットワークからActive Directoryが参照できるようにネットワークを構成する。Active Directoryが社内ネットワークに存在する場合は、社内ネットワークと仮想ネットワークをVPNなどで接続する必要がある。

 次に、オンプレミスのActive Directory側にAzure AD Connectサーバーを構築して、ID同期とハイブリッドAD参加の設定を行う必要がある。ハイブリッドAD参加を設定することで、Active Directoryに参加したデバイスをAzure Active Directoryへ同期し、Azure Active Directoryに参加させることができる。

Windows 365 Enterpriseの構成の例。Azure仮想ネットワークからオンプレミスActive Directoryへ参照できるように構成する必要がある
Windows 365 Enterpriseの構成の例。Azure仮想ネットワークからオンプレミスActive Directoryへ参照できるように構成する必要がある
(筆者提供)
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 Windows 365 Enterpriseの管理画面では、どのAzure仮想ネットワークを使用するかを選択できる。作成した仮想ネットワークを選択すると、各構成が正しく行われているかのチェックが実行される。

Windows 365 Enterpriseの[オンプレミスのネットワーク接続]の設定画面。作成時に各条件を満たしているかのチェックが実行される
Windows 365 Enterpriseの[オンプレミスのネットワーク接続]の設定画面。作成時に各条件を満たしているかのチェックが実行される
(画面写真は筆者が取得、以下同じ)
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 オンプレミス環境で運用していたWindows ServerをAzure上へ移行している企業では、社内ネットワークとAzure仮想ネットワークとの接続が既に構成されているかもしれない。こういった企業では、既存の接続を流用したり、同様の方法で接続を構成したりできるため、Windows 365 Enterpriseの導入は比較的容易となる。しかしこのような構成を新規に構築すると、既存環境に合わせたネットワークの設計や人的リソース、コストが必要となる。

 今後、Azure Active Directoryのネーティブサポートが提供されるといわれている。そうすれば、ネットワーク構成がシンプルになり、構築の手間が削減されることを期待したい。