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 読者のみなさんは、平成最後の大みそかとなった2018年12月31日をどのように過ごしただろうか。自宅やふるさとで家族や親類とのんびり過ごした人、海外旅行に出かけた人など、さまざまだろう。

 そんな中、筆者は大みそかの午後に横浜にいた。人気歌手グループ「Perfume(パフューム)」のカウントダウンライブに立ち会うためだ。

 この日の深夜、2018年から2019年に年が変わる瞬間を、一人でも多くのファンとPerfumeの3人が共有するという前代未聞のプロジェクト「docomo×Perfume/その瞬間を共有せよ。」が予定されていた。これはNTTグループが2020年以降を見据えた新しいエンターテインメント体験を模索する「FUTURE-EXPERIMENT」の一環。今回はその第4弾(VOL.04)に当たる。

2018年の大みそかにNTTドコモとPerfumeが実施したプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT VOL.04 その瞬間を共有せよ。」
2018年の大みそかにNTTドコモとPerfumeが実施したプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT VOL.04 その瞬間を共有せよ。」
(出所:NTTドコモ)
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 FUTURE-EXPERIMENTの重要な要素は「5G(第5世代移動通信システム)」の実用化だ。今回のイベントでも、5Gによる通信が一部で使われた。

 筆者はカウントダウンの生中継をするNTTドコモに特別に許可をもらい、横浜アリーナでカウントダウンライブの一部始終を見届けることができた。ドコモはPerfumeが2018年9月にスタートさせたライブツアー「Perfume 7th Tour 2018『FUTURE POP』」のスポンサーである。

 それでは、知られざるカウントダウンライブの舞台裏を見ていこう。そこにはライブ演出を支える数々のテクノロジーや工夫がふんだんに盛り込まれ、何百人ものスタッフが裏側で一夜限りのステージを支えていた。

 なお、本来はメディアによる現地取材を予定していなかったというドコモが筆者に取材許可を出したのは、2018年12月に日経 xTECHの「記者の眼」に書いた記事の影響が大きい。Perfumeの振り付けやライブ演出で知られるMIKIKO氏と、ライブのデジタル演出を手掛けるエンジニア集団、Rhizomatiks(ライゾマティクス)を詳しく取り上げたことが、ドコモに認められたようだ。

 2018年8月末に、MIKIKO氏が主宰するダンスカンパニー「ELEVENPLAY(イレブンプレイ)」とライゾマらが実施した、機械学習を用いたダンス公演「discrete figures(ディスクリート フィギュアズ)」と、Perfumeのライブ演出に使われているテクノロジーには類似するものも多い。

横浜アリーナと渋谷交差点が5Gでリアルタイムにつながる

 最初に「その瞬間を共有せよ。」の全体像を確認しておく。そもそも2018年12月31日は、PerfumeのFUTURE POP(FP)ツアーの国内最終日だった(振替・追加になった大阪を除く、2019年はアジアと北米でワールドツアーがスタート)。平成最後の大みそかという、一度きりのカウントダウンライブという特別な日であり、Perfumeのオフィシャルファンクラブ「P.T.A.」の会員だけが参加できた。

 当日、横浜アリーナに集結した熱狂的なPerfumeファンは、約1万2000人。普通なら、この人たちとカウントダウンを共にするのが、大みそかに開催されるライブの定番スタイルといえる。

 そこにドコモが加わることで、年が変わる深夜0時の前後15分間、具体的には2018年12月31日の午後11時45分から、2019年1月1日の0時15分までの30分間の様子を、ドコモのスペシャルコンテンツとして横浜アリーナから全世界に生中継するというのが「その瞬間を共有せよ。」の内容だ。現在はYouTubeに、8分半に縮めたダイジェスト版のアーカイブ映像がアップされている。興味がある人はそちらを見てほしい。

 筆者は横浜アリーナに着くまで、午前0時の年越しという誰にでも共通に訪れる瞬間の共有こそが、今回のクライマックスだと思い込んでいた。だが早めに現地入りしてみると、「その瞬間を共有せよ。」を2018年夏ごろから企画してきた電通のチームから驚きの事実を告げられた。

 「東京・渋谷のスクランブル交差点に、ライブのサテライト会場といえる特設ステージを準備している。そこの大型ディスプレーにPerfumeのカウントダウン映像が生中継で流れる。しかも集まった観客には光る腕輪型のLEDデバイス(カナダのPixmobが開発している『PixMob』)を配り、横浜と渋谷で『光』を共有する演出を試みる。これが今夜の最大の目玉だ」

 しかも話には続きがある。「渋谷にPerfumeの生中継映像が現れることは、まだ誰にも告知していない。午後11時すぎに初めて、渋谷にいる人たちに知らせる段取りになっている」というのだ。JR渋谷駅前にある西武百貨店脇の道路を封鎖して実施するという。そんなことをして、渋谷が大混乱に陥ることはないのだろうか。でもこれが、一発勝負であるライブならではのドキドキや高揚感だなと改めて感じた。失敗するかもしれない、リスク覚悟の大勝負。面白くなってきた。

 筆者は横浜アリーナ入りした時点で、1万2000人のファンには1人1台、スティック型のLEDライト「FreFlow(通称フリフラ、ソニーグループ製)」が全席に置かれていることに気付いた。フリフラは最近、多くのライブなどで使われている人気のLEDライト。無線制御でライトの色を一斉に変えられるので、会場全体や座席のゾーンごとにさまざまな光を出してライブを盛り上げられる。