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 問題に輪をかけているのが、若い世代は動画以外にも、うかつな内容の投稿が非常に多いことだ。SNSのプロフィルに顔写真を載せて、本名を記載している人も少なくない。学校名やアルバイト先の店舗名まで投稿していたりする。そうなると不適切な動画の拡散とともに、本人や家族、学校、バイト先などが簡単に特定されてしまう。

6年前のバカッター騒ぎは、今の若者の記憶にない

 今回の騒動を巡っては「学校でITリテラシーについて学んでいるはずなのに」といった声も聞かれた。ただ、若い世代の一部にとって、SNSの炎上やそれに伴う個人の特定は、実感を伴う出来事ではなかった。6年前のバカッター騒動の教訓は、世代を超えて受け継がれていない。

 それを示す端的な現象が、SNSのプロフィル欄に実名や学校名を記載したり、顔写真を載せたりしていることだ。学校では「ネットでの顔出しは危険」と注意を喚起している。にもかかわらず、多くの若者がそれを守っていない。実際に怖い思いをした人が周りにほとんどいないことが、その一因なのだろう。

実名や学校名を記載しているプロフィルのイメージ
実名や学校名を記載しているプロフィルのイメージ
(出所:鈴木 朋子)
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 若い世代にとって、バカッターが話題になった6年前というのは「かなり昔」の話である。現在の高校2年生は、2013年にはまだ小学生だった。当時はスマホを持っていないし、SNSも使っていない人がほとんど。テレビのニュースで散々取り上げられたのに、自分事という感覚はあまりなかったはずだ。というか、騒ぎに気付いてもいなかっただろう。

 今回の騒動で、テレビのニュースでも不適切動画が何度も流された。親やアルバイト先から改めて注意するように言われた若者も多いことだろう。軽い気持ちで行った投稿に、どれだけの影響力があるのか。若者もようやく自分事として捉えられるようになったはずだ。

 今回、不適切な動画を投稿された回転寿司チェーンの「くら寿司」は店員を解雇するとともに、刑事と民事での法的措置の準備に入ったと発表した。同社は厳格な対応を取った理由について、Webサイトに掲載したお知らせで「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNSの投稿に対し、当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、抑止力とする」と記している。もちろん、店員だけの問題ではなく、くら寿司の監督責任も問われることになるだろう。

 SNSはいつでもどこでも友人と交流を深められる便利なツールだが、同時に危険性をはらんでいる。24時間で消えるはずの動画でも拡散してしまうのが、今回の騒動で明らかになった。公開する範囲を限定したとしても、友達が拡散してしまう可能性は十分ある。手元のスマホからネット投稿した動画は基本的に、コントロールが利かないと思った方がいい。拡散は簡単には止められない。

 若い世代だけでなく、親や学校、企業も改めてSNSのリスクを考え、今回の教訓を生かしていくようにしたい。スマホの持ち込みを禁止するといった物理的な対策は一案かもしれないが、ヒューマンリスクへの対策として今回の出来事を語り継ぎ、世代を超えて正しいSNSの使い方を学んでいくことが大切であると、筆者は考えている。

鈴木 朋子(すずき ともこ)
ITライター・スマホ安全アドバイザー
ソフトウエア開発会社のSEを経てフリーランスに。SNSやアプリなどスマートフォンを主軸にしたサービスを行っており、書籍や雑誌、Webに多くの記事を執筆。スマホネイティブと呼ばれる10代のIT文化に詳しい。All About(オールアバウト)iPhone・SNSガイドも務める。著作は『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『今すぐ使えるかんたん文庫 LINE & Facebook & Twitter 基本&活用ワザ』(技術評論社)など20冊以上。