全2214文字
PR

 もちろん、油性マーカーとしても優秀だ。1本で太字も細字も書ける。安否メモは目立たせたい箇所に太字を使えば、メリハリが付いて見やすくなる。薬のケースや食料の外袋には、細字で中身の詳細や消費期限を書きとめられる。1本で「書く」という用途をおおむねカバーできる。速乾性と耐水性に優れ、書いた文字がにじまずにしっかりと残るのも心強い。

マーカーは従来のマッキーと同じ油性インク
マーカーは従来のマッキーと同じ油性インク
(出所:ゼブラ)
[画像のクリックで拡大表示]

 食事や日中の活動状況を記録したり、コンビニエンスストアのトイレやコインランドリーの再開といった近隣の情報を地図上にメモしたりと、災害時は何でも書きとめることで自分の生活状態を把握できるようになる。避難している間は体だけでなく、精神的にも大きな負担がかかる。いつ何が復旧するか分からない状況下で、身の周りの情報を整理し、目に見える状態にしておくことは大きな安心感につながるはずだ。

便利だけどかさばる布テープが小型に

 油性マーカーはさまざまな材質に書けるペンとは言え、建物や公共物に直接文字を書くのは、できるだけ避けるべきだろう。そんなときに布テープがあれば、剥がれにくい「ラベルメモ」としても使える。例えば、自宅のドアに避難先を書いて貼っておけば、スマホが使えない状況での強力な連絡手段になる。

 ラベルメモ代わりだけでなく、身の周りの安全を確保する目的にも使える。災害直後はガラスが飛散していたりして、屋内外を問わず危険な状態になる。テープの粘着面を使ってガラスなどの細かな破片をペタペタと取り除いたり、亀裂やひびの入ったものを補強したりするのにも布テープが役立つ。

 そんな便利な布テープにも弱点がある。かさばることだ。以前、警視庁警備部災害対策課が「布テープは災害時に工夫次第で役立つが、かさばることが難点」といった内容をTwitterでつぶやき、芯の部分を軟らかくなるまで押し潰して取り除く方法を投稿したほどだ。

 今はコンパクトな布テープが売られている。代表格がニチバンの「コンパル」だ。2015年8月の発売なので新商品とは言えないが、知らない人はまだまだ多いだろう。新品でも直径が約65ミリと、一般的な布テープの半分ほど。芯を潰して取り除くような手間をかけなくても、邪魔にならず持ち歩いたり、防災バッグに放り込んでおいたりできる。

ニチバンの「コンパル」。価格は500円(税別)。黄色やピンク、銀など5色があり、目的に応じて使い分けられる
ニチバンの「コンパル」。価格は500円(税別)。黄色やピンク、銀など5色があり、目的に応じて使い分けられる
(出所:ニチバン)
[画像のクリックで拡大表示]
コンパルはサイズが小さく携帯しやすい
コンパルはサイズが小さく携帯しやすい
(出所:ニチバン)
[画像のクリックで拡大表示]

 軽くて小さく、一つで何役にもなるマッキーワークやコンパルは、限りある防災バッグの容量を食い潰さず、非常時に連絡や安全確保の手段を増やしてくれる。なお、防災バッグに入れておく場合は、文具の「寿命」に注意が必要だ。例えば、マッキーワークの保存期間は、ゼブラによると数年程度とのこと。キャップの締まり具合や保存状態によっては、インクが出ないこともある。1年に一度でいいので、定期的に確認したい。

 防災バッグに入れるのではなく、マッキーワークやコンパルを普段から自宅と職場に1~2個置いておくという手もある。使いながら買い足していくサイクルをつくると、自然と日常備蓄ができる。使い慣れた身近な文具が、いざというときに自分や家族の身を守ってくれる。

大吉 紗央里
ライター・編集者。1984年東京都生まれ。制作会社のディレクターを経て、2015年よりフリーランス。