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 ここでふと疑問が湧く。「お客様負担額1円」でiPhone 13 miniを購入するにはMNP(番号ポータビリティー)によってauの回線を新規契約する必要があった。加えて、将来の下取りなどを前提に端末を安く購入できる「端末購入サポートプログラム」の利用も求められた。これにより回線契約にひも付く値引きと、店舗独自の値引きの両方が適用された。従ってサブブランドなどに乗り換えると、割引の条件を満たさなくなる。その場合、違約金や割引停止などの問題は起こらないのだろうか。疑問を解消するため、筆者は携帯大手3社に直接確認してみた。

 大手3社の説明を総合するとまず、新たに契約した回線をすぐ他のブランドや他社に乗り換えることは「(利用規約である)約款上は問題ない」とする。「むしろ、違約金など解約ルールを設けるのはご法度だ」という。

 携帯大手3社は長年「2年縛り」と呼ばれる独特の商習慣を続けてきた。2年間の定期契約を途中で解約すると1万円程度の違約金がかかるというもので、違約金なしで解約できるのは2年間のうち数カ月の「契約更新月」に限られていた。しかも2年ごとに契約が自動更新される仕組みだった。こうした顧客の囲い込み策によって、他社から割安な料金プランが登場しても、ユーザーは携帯電話事業者を容易には乗り換えられなかった。

 こういった状況を変えたのが2019年10月施行の改正電気通信事業法だ。契約満了前に解約した際の違約金が上限1100円へと規制された。さらにNTTドコモが2021年10月に、ソフトバンクは2022年2月にそれぞれ違約金を全廃した。auも2022年3月末までに続く予定で、大手3社の対応がそろう。

NTTドコモから乗り換えやすくなったとアピールするソフトバンクショップのポスター
NTTドコモから乗り換えやすくなったとアピールするソフトバンクショップのポスター
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 疑問はもう1つある。回線契約を条件とした端末割引の扱いだ。携帯大手3社によると、こうした割引はそもそも回線契約をした時点で端末代金に対して値引くため、回線契約を継続するか解約するかは問わないのだという。

 端末代金を分割払いにしても同じだ。例えば筆者はiPhone 13 miniを買った際、auが将来の下取り価格を残価として設定し、購入者は本体価格から残価を差し引いた額を2年間の分割払いにする「スマホトクするプログラム」を利用した。この月々の分割支払額に対して値引きが毎月適用される仕組みで、auからサブブランドや別の携帯電話事業者に乗り換えたとしても値引きは続くという。

 かつての携帯電話業界では、MNPの利用やスマホ購入を条件に、回線料金を割り引く方式が主流だった。改正電気通信事業法により「通信料金と端末代金の完全分離」が導入されたことで、そうした方式も姿を消した。

 「本音を言えば、回線契約後にすぐ他社に移転されると(割引分を割高な通信料金で回収できないので)つらい」と、ある携帯大手の関係者は話す。ユーザーがサブブランドに乗り換えてもそれは同様だ。しかしその関係者は「当社のユーザーとしてとどまってもらえれば会員サービス基盤を維持できる」と明かした。こう考えると、スマホ売り場でのサブブランドへの「誘導」も納得がいく。

 疑問が解消した筆者はサブブランドへの乗り換えを試すことにした。auの「1GBまでで月額2178円」のプランからUQモバイルのもっと割安なプランへ乗り換える。オンラインのサポートサービスで、UQモバイルの「月間3GBで月額1628円」の料金プランを選択。後日、自宅に郵送されてきたUQモバイルのSIMカードを端末に差し込んで端末の電源を入れる。さらにauからUQモバイルへの回線切り替え操作も必要になるなど少々手間がかかったが、問題なく乗り換えることができた。乗り換え後の通信速度は十分で、不便を感じていない。在宅勤務が主体の働き方のためスマホの回線を使う機会が減っているが、外出が増えればサブブランドのメリットをより多く感じられそうだ。