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 米OpenAI(オープンAI)の「ChatGPT」をはじめとする高度な言語AI(人工知能)が国内外で大きな話題となっている。英語、日本語、中国語など多言語を操り、人が話した言葉を聞き取ったり、こなれた文章を書いたり、翻訳したりする。近ごろは毎日のようにテレビやインターネットでニュースを見かけるほどだ。様々な言語AIを試しながら、自分なりの活用法を探っている読者の方は少なくないだろう。

 筆者も最近、取材活動にChatGPTなどの言語AIがどれだけ役立つのかを検証する機会があった。スペイン・バルセロナで2023年2月27日から3月2日まで開催されたモバイル業界最大級の展示会「MWC Barcelona 2023」に初めて参加した。世界202の国と地域から8万8500人以上が参加したという同イベントは、基本的に英語が使われる。カンファレンス、メディア向けの展示ブースツアー、1対1のインタビューの全てが英語だ。

 しかし筆者は英語があまり得意ではない。とりわけ英文を作ったり話したりするのが苦手で、筆者にとってハードルの高い取材になる。そこでChatGPTなどのAIが役に立つのではないかと考えた。

 具体的にはChatGPTに加え、同じオープンAIによる高精度の音声認識AI「Whisper」、米Otter.aiのリアルタイムの文字起こしに強い音声認識サービス「Otter(オッター)」、翻訳精度の高さで日本でも人気が高いドイツのDeepL(ディープエル)の機械翻訳サービス「DeepL」という4つのAIを使う。ChatGPTとOtter、DeepLには無料版と有料版があるが、今回はいずれも有料版を利用した。

「MWC Barcelona 2023」の英語取材で筆者が活用したAIツール。英文メールは「ChatGPT」(左上)、インタビューは「Otter」(右上)と「DeepL」(左下)、文字起こしは主に「Whisper」を使用した
「MWC Barcelona 2023」の英語取材で筆者が活用したAIツール。英文メールは「ChatGPT」(左上)、インタビューは「Otter」(右上)と「DeepL」(左下)、文字起こしは主に「Whisper」を使用した
(写真:日経クロステック)
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英文メールの作成をChatGPTが代行

 結果から言うと、筆者は大きく3つのシーンでAIの絶大な効果を実感した。1つめはスペイン渡航前の2023年2月上旬、MWCの取材許可証をオンラインで申し込んだ後だ。MWCの運営事務局の広報担当者から「手続き中の取材許可証が登録システムのエラーによって発行できなくなった」「別のタイプの取材許可証に切り替える必要がある」といった連絡を受け、英文メールを何度かやり取りすることになった。

 筆者は当初、自分で英文を考えたりDeepLなどの翻訳サービスを利用したりしながら事務局側と連絡を取り合っていた。だが普段は英文を書く機会が少ないためおっくうになっていた。そこで途中からはChatGPTにメール作成を代行させた。