2023年4月19~27日、プログラミング言語「Python」の世界最大級のカンファレンス「PyCon US 2023」が米ソルトレークシティーで開催された。PyConは「Python Conference」を略した名称で、講演やポスター発表、トレーニング、開発イベントなどを通じて、主にPythonを利用してソフトウエアを開発するエンジニアが最新情報を共有するイベントだ。
米国で初めてPyCon USが開催されたのは2003年。2020年のPyCon USが新型コロナウイルスの影響で中止となったため、今回で20回目の開催となる。イベントでは「20」というキーワードを使って過去を振り返る動画が流されたり、Pythonの生みの親であるGuido van Rossum(グイド・ヴァン・ロッサム)氏による講演が行われたりした。
筆者はPythonを使ったWebシステム開発やPython関連のコンサルティングを手がけるCMSコミュニケーションズという企業を経営している。同時に国内最大級のPythonイベントである「PyCon JP」を開催する一般社団法人「PyCon JP Association」の理事を務める傍ら、Python人材の育成を支援する一般社団法人「Pythonエンジニア育成推進協会」の顧問理事でもある。
こうした立場からPythonソフトウエア財団(PSF:Python Software Foundation)との連携強化や、アジア地区にPSFをはじめとしたコミュニティーメンバーにもっと目を向けてもらえるように尽力したいと思っている。多様性が増したとはいえ、Pythonの中心地が米国であることは間違いない。現地で実際の声に触れることが重要だと思い、ここ数年はPyCon USに参加をしている。
ちなみに米国以外でも世界50カ国以上でPyConは開催されている。日本で開催するPyConは「PyCon JP」という名称だ。またアジア太平洋地域のPyConである「PyCon APAC」も2010年から継続して開催されている。今年の「PyCon APAC 2023」は10年ぶりに東京で開催予定だ。PyCon APACが開かれる地域では、その場所で開催されるイベント名が「PyCon APAC」になる。このため2023年のPyCon JPは「PyCon APAC 2023」という名称で開催する。
オンライン参加者を含めて3000人弱が集結
新型コロナの影響は緩和しつつあるが、「全世界からどのような人々が集まるのか」「不透明な経済状況は影響しないのか」など、筆者には気になることがいくつかあった。特にアジア地域から多くのコミュニティーメンバーが集まれば、それだけアジア地域コミュニティーのプレゼンス向上につながる。
PyCon US 2023の参加者は多くは北米中心であった。ただしアジアや南米、アフリカなどからの参加者が多くなっていた。新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年よりも多様性が増し、受け入れられやすい環境が徐々に整っていると感じた。
発表によれば、PyCon US 2023への参加者は現地参加が2250人。オンライン参加が490人である。22年の参加人数(現地参加は1747人、オンライン参加は655人)と比較すると、大幅に現地参加者が戻ってきた。また現地での初参加者の割合は77%と驚きの数字であった。
私が知る限り、アジアでは日本から10人程度、韓国と台湾からそれぞれ数人が参加していた。香港やフィリピンからの参加者もいた。22年はアジアからの参加者が少なかったことに比べると、新型コロナの影響は小さくなっていると感じた。米国内ではマスクをしている人をほとんど見かけない。ただPyCon USの会場内ではマスク着用を必須とし、世界各国から多くの人が集まることに対して安全に安心して参加してもらえるようにという主催者側からのメッセージがあった。