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炎上は避けてバズりたいは虫がいい

 企業が公式アカウントを運営するときは、一人でも多くの人に投稿を広めたいと考えます。しかし「炎上なしにバズりたいと考えることは虫がいい」とおおつねさん。さらに「ネットを見ている人は、特定の企業が盛り上がることには興味がありません。その時点で、企業の思惑とはズレが生じています。潜在顧客が掘り起こせればいいのですが、バズりさえすればビジネスの結果が良くなると考えるのは、途中が抜けています」とおおつねさんは指摘します。

 「どうしたらバズりますかというときに、3B(Baby、Beast、Beauty)を出せばウケますとか、トリプルF(Female、Fight、Food)は耳目を引きますよね、とアドバイスしているコンテンツアドバイザーはいますが、それでバズるのは単なる現象です。デジタルマーケティングや広報を担当する人もついそれに手を出します。政治的な話題やフェミニスト問題に言及すれば注目されるのかなと考えて、やってはいけないことをやってしまいます。しかし、作戦は一つとして同じではありません。僕がMiTERUという会社で提供するのは考え方です。謝罪の際にウソをついてはいけないというのは確かですが、では内部書類を全部公開すればいいのかといえば、それは違います。何を言って、何を言わなくていいのか、その判断が重要です」(おおつねさん)

知見を生かして炎上予防を支援

 MiTERUは、おおつねさんと東さんが持つネットの知見を生かした企業ですが、そこに元AppBankのCFOだった廣瀬光伸さんも取締役として加わりました。その廣瀬さんは「炎上する前の対策が重要」だと語ります。

 「日本は予防措置という概念が弱いのです。炎上した後に逆SEO(特定ページの検索順位を下げる)とか、検索のサジェストを消して風評被害対策をするといった物理的作業を行う会社はありますが、ではこうつぶやいたときにどんなリスクが発生するかをアドバイスする企業はありません」(廣瀬さん)

MiTERU取締役の廣瀬光伸さん
MiTERU取締役の廣瀬光伸さん
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 廣瀬さんは、株式上場の監査でRCM(リスクコントロールマトリクス)という株主に被害を与えないようにどこにリスクがあるか網羅的に分析して審査する仕組みにヒントを得て、それがネット炎上についても適用できると考えました。

 「情報を発信する立場なら、RCMの中からこういうリスクがあるよとアドバイスができます。炎上は避けられない面もありますが、RCMがあればダメージコントロールの概念は持ちやすくなります。火力の高いダメージかそうじゃないか、長期化するか短期化するか。おおつねさんと東さんは、ネットの膨大な歴史を知っている上に経験も積んでいるから、その行動がどういう結果を生み出すか、推測することができます」と廣瀬さんは話します。

 また、企業や個人はネットにおけるリスクコントロールに自信がないため、「それで合っているよというエビデンスを欲しがっている」とのこと。

 「でも今、そういうサービスはありません。MiTERUの今後のビジョンについては、駆け込み寺として作ってもいいし、寄り添い型でもいいし、ネットリテラシーとしてアカデミックな分野を作るのでもいいと考えています。おおつねさんや東さんがこれまでネットで培ってきた知見は“無形資産”です。その価値を広めていきたいと考えています」と廣瀬さんは意気込んでいます。