募金箱にお金を入れると、壁一面に並んだ“リアルな手型”が一斉に多彩なリズムで手をたたく――。これは2017年に台湾のセブン-イレブンが企画した募金イベントのインスタレーションだ。募金自体は毎年の恒例行事だが、今回初めて導入した“拍手マシン”に対する反響がすさまじかった。拍手シーンの動画がSNSで拡散されたこともあり、イベント期間中の来店客数が普段よりも30%増加。さらにスタートから14日間で1万人以上が寄付し、その寄付額は前年の2倍にも上り過去最高を記録した。
このインスタレーションは、審査が非常に厳しいとされる英国「D&AD賞」のWood Pencil賞をはじめ各国の広告賞を受賞するなど、世界的に高く評価された。何といっても耳目を集めたのは奇妙な拍手マシンだ。動きや形もさることながら、拍手の音も実際に手型同士をぶつけ合うことで鳴らしているというリアルさがウケた。そうした機械が生み出す本物のような“拍手の音”が人々を魅了し、思わず寄付をさせてしまうほどの力を発揮したのだ。
実はこの拍手マシンを開発したのは東京都品川区にあるバイバイワールドという日本企業。まだ33歳という同社の高橋征資社長は、「拍手は世界共通のコミュニケーションツール」を旗印に、ひたすら拍手に関連する製品を作り続けている自他ともに認める「拍手バカ」である。
拍手に魅了された若き社長が、今年5月、満を持してローンチしたのが拍手ロボット「ビッグクラッピー」だ。人感センサーで人の動きを検知し、手をたたきながらお客の呼び込みをしたり見送ったりできるほか、専用アプリとの連携でちょっとしたおしゃべりができるなどインタラクティブな機能を備える。
このどこか間の抜けた、愛らしいルックスの拍手ロボットの開発の裏には、苦労はもちろんだが予想もしなかったような幸運の連続があった。