全1480文字
PR

 KDDIの携帯電話サービスで2022年7月2日未明から発生した大規模な通信障害。きっかけは機器交換のトラブルによるわずか15分間の音声通話の不通だった。同社によると、その対処中に発生した「輻輳(ふくそう)」によって完全復旧まで3日以上かかったという。輻輳とは何か、輻輳がどうして障害を長引かせるのかを見ていこう。

輻輳はネットワークの「渋滞」

 輻輳は日常では聞き慣れない言葉だが、通信事業者にとっては全力で回避すべき非常事態である。例えばNTT東日本はWebページでは、「交換機の一定時間内に処理できる能力を超える電話が集中することにより発生するいわゆる『電気通信網の渋滞』のこと」と説明している。NTT西日本のWebページでは、輻輳が集中的に発生することで、「電話の接続処理が滞るだけでなく、やがては交換機処理自体が停止してしまう恐れがあります」と影響の大きさを示している。

 電話網で輻輳が発生しやすいのは、人気アーティストなどのチケット予約が始まった直後や、災害が発生したときだ。チケット予約では、予約の開始直後に電話受付に電話が集中し、受付近くの交換機が過負荷になる。これが輻輳である。

チケット予約の開始直後に発生する輻輳。図はNTT西日本の資料を基に編集部で一部加工
チケット予約の開始直後に発生する輻輳。図はNTT西日本の資料を基に編集部で一部加工
(出所:NTT西日本)
[画像のクリックで拡大表示]

 NTT東日本とNTT西日本では、輻輳が発生すると当該の交換機に電話が集中しないように、接続量を制御して輻輳を解消するとしている。近年では2021年春、新型コロナウイルスのワクチン接種予約窓口の電話受付に対して、流量を減らすよう規制をかけて話題になった。輻輳を解消する手段として、流量規制が有効な手段となっている。