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(4)かつて皆が使っていた物をベースにした「テープ回しといて」「鉛筆なめなめ」

 かつては皆が使っていたが、今ではあまり使わなくなった物やサービスを基にした言葉も、おっさんビジネス用語として少なくない。「テープ回しといて(録音しておいて)」は、記憶メディアが変わった今は通じないと考えた方がいいだろう。「鉛筆なめなめ」は、じっくり考えるといった意味もあるが、(ごまかして)数字の帳尻を合わせる場合に使われることが多い。もともとは、質の悪い鉛筆をなめると書きやすくなる現象があったから生まれた言葉だとされる。「そば屋の出前(もうできていると進捗をごまかす)」も、店に直接出前を頼んだことのない若者には想像できないかもしれない。

(5)野球や相撲、マージャンが語源の「ボールを投げる」「土俵際」「一気通貫」

 大人と若者では、親しんできたスポーツや遊戯が違う。野球や相撲、マージャンの用語を使った言葉を若者が理解できなくても仕方がないだろう。「ボールを投げる(仕事を依頼する)」「全員野球(メンバー全員で取り組む)」は野球から生まれている。「土俵際で踏ん張った(ギリギリで耐えられた)」「徳俵で残った(土俵の飛び出ている部分である徳俵で残れた)」などは相撲から来ている。

 マージャン用語が源流の言葉もある。「リャンメン印刷して(リャンメンは両面の意味)」「一気通貫(初めから終わりまで)」などだ。一気通貫はマージャンで同じ種類の数はいを一から九までそろえる役だが、マージャンを知らない筆者はビジネス用語だと思っていた。

 ここまでに挙げた言葉のほかにも、おっさんビジネス用語は多々ある。(1)~(5)の分類に収まらなかったが、よく使うおっさんビジネス用語を挙げよう。

 「一丁目一番地(最初にやるべきこと)」「仁義を切る(筋を通す)」はビジネスや政治でも使う。「決めの問題」は、優劣がない選択肢がある際にどちらかに決めてしまっていいケースなどで使われている。「正直ベース」は「正直に言うと」という意味だが、「賃金ベース」や「情報ベース」と同様に「ベース(基礎)」を付けてもったいぶることで、特別感が出る。似たような言葉では「ドリブン」や「マター」もある。

 実を言うと、これらのおっさんビジネス用語の中には、筆者の理解が曖昧なものもあった。二重・三重の意味を持つ用語もある。そのため大人同士でも、細かなニュアンスまでは共有できていないかもしれない。

 特に社会人になりたての若者と会話をするときには、おっさんビジネス用語は業界の専門用語と同じく相手が理解できないかもしれないと想定して補足説明する必要があるだろう。「テレコは互い違いにという意味です」のような具合だ。そうしないと、若者は勘違いしたまま仕事を進めかねない。

 とはいえ、おっさんビジネス用語を知っている人同士であれば、それを使うとコミュニケーションが円滑になる。気心の知れた大人世代が集まる場では、あえておっさんビジネス用語を連発するのも楽しそうだ。

鈴木 朋子(すずき ともこ)
ITライター・スマホ安全アドバイザー
鈴木 朋子(すずき ともこ) ITライター・スマホ安全アドバイザー。ソフトウエア開発会社のSEを経てフリーランスに。SNSやアプリなどスマートフォンを主軸にしたサービスを行っており、書籍や雑誌、Webに多くの記事を執筆。スマホネイティブと呼ばれる10代のIT文化に詳しい。All About(オールアバウト)iPhone・SNSガイドも務める。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など20冊以上。