コロナ禍によってさまざまな業種が影響を受けているが、個人向け不動産仲介業も例外ではない。問題の1つは来店客が減ったうえに、マンションやアパートの内見をためらう借り手が増えていることだ。この問題を解決しようと、不動産仲介業者のなかには物件紹介のショートムービー(短尺の動画)を作ってSNS(交流サイト)で配信し成果を上げるケースが登場している。
好例の1つが、翔星(しょうせい)建設(奈良市)のオンライン接客型不動産仲介サービス「スタイリー不動産」だ。若手社員の上田健登氏が主導して2020年7月に、ByteDanceのショートムービーSNSである「TikTok」で物件紹介を開始。5カ月で約6000人のフォロワーを獲得したという。アカウント名は「けんちょび@オシャレなお部屋紹介」である。
上田氏がTikTokで物件紹介を始めたのは「物件の情報をSNSで発信しなければもったいない」と考えたからだ。TikTokのアカウントを作って物件の紹介動画を投稿したところ、その動画に「物件を探している」「引っ越したい」といった反響が想定以上に返ってくるようになった。フォロワーも徐々に増えていったという。TikTokアカウントのプロフィル欄から写真共有サイト「Instagram」の同氏のアカウントにリンクしており、物件探しの相談はInstagramのダイレクトメッセージで受け付けている。
上田氏のTikTok動画はサムネイルとしてエリアや家賃、間取り図を載せており、再生すると玄関から廊下を通って部屋に向かう様子を動画で確認できる。トイレ、収納、風呂の様子、日当たりなどを自分が内見しているかのような視点でチェックできる。TikTok動画らしく、再生速度を速め、アップテンポのBGMを流す。
上田氏は「短尺の動画は物件をイメージしやすい。写真だと借り手の見たい箇所の写真がないケースがある。長尺の動画では飽きてしまう。動画の長さは30秒程度がいいのではないかと考えている」と語る。
TikTokでは大学生など若い世代からの問い合わせが多く、契約実績は23件に上るという。上田氏は「TikTokのおかげで当社の認知度が高まり、全国から問い合わせが入っている。動画がバズると1日に30件以上の問い合わせが入るため慌てることもあるが、しっかりと対応している」と話す。「不動産仲介ではベテラン担当者のほうが信頼される面があるが、TikTokを使えば若い営業担当者でも契約を成立させることができる」(上田氏)。