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 さらにSAPユーザーを憂鬱にさせているのは、単なるERPのバージョンアップでは済まないことだ。

 SAP製品を継続利用すると決めた場合、S/4HANAへの移行が必須になる。S/4HANAはSAP ERPとは異なるERPであると捉えなければならない。大きな違いの1つがデータベース(DB)だ。SAP ERPは米オラクル(Oracle)の「Oracle Database」や米マイクロソフト(Microsoft)の「SQL Server」といったRDB(リレーショナルデータベース)を利用しているが、S/4HANAではSAPのインメモリーDB「HANA」のみとなる。

欧州SAPの製品サポートのロードマップ
欧州SAPの製品サポートのロードマップ
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 SAPジャパンの上硲優子 ソリューション統括本部 デジタル・アプリケーション第2部 グループリーダーは「S/4HANAではHANAの利用を前提にデータモデルをシンプル化したり、バッチ処理をなくしたりとアーキテクチャーを見直している」と説明する。加えて、これまでSCMとして提供していた「拡張倉庫管理」機能や、ERPとは別に提供していた業種別機能をERPの機能として提供するなど「SAP ERPと比較してS/4HANAの機能を再配置しているケースも多い」(上硲グループリーダー)という。

基幹系とAI、IoT、クラウドの関係を考える

 これまで基幹系システムの刷新を検討する場合は、会計や生産管理、販売・物流などERPがカバーする範囲で業務のあり方やシステム化の方針を決定すれば済んだ。しかし今回の見直しでは、「自社のデジタル化の戦略なども踏まえなければならない」とガートナージャパンの本好宏次 リサーチ部門 エンタプライズ・アプリケーション担当 バイス プレジデントは指摘する。

 AI、IoTの活用といったデジタル化に関する戦略や、デジタル化を支えるシステムのあり方を踏まえて、基幹系刷新の方針を決める必要が出てくるわけだ。これもSAPユーザーを悩ませる要素の1つである。

 SAPはAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングス)といった新たな領域のITをサポートする製品群「SAP Leonardo」を2017年に発表。S/4HANAとLeonardoを連携利用するアプリケーションを提供し始めている。

 その1つが、機械学習を使って会計処理の作業を効率化するアプリケーションだ。「アドオン(追加開発)ソフトの見直しなどをせずにSAP ERPからS/4HANAに移行した場合、こうしたLeonardoの機能が利用できなくなるケースもある」とSAPジャパンの松舘学 プラットフォーム事業本部 エバンジェリストは警告する。

 従来と同様にオンプレミスで使うのか、クラウドに移行するかも考えどころだ。基幹系の領域でのクラウド利用は今や珍しくない。数年前ならSAP ERPをクラウド上で稼働させるのは現実的でなかったが、「特に中堅企業は運用負荷の経験も考慮して、S/4HANAの導入を検討する際にクラウドを利用するのが当たり前になっている」と東洋ビジネスエンジニアリングの佐藤雄祐 執行役員は話す。