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多層材料の熱対策(1)

 次に、大きさが20mm×20mmで、A/B/Cの三つの層から成る材料を考える(図6)。上側に10Wの発熱があるとする。下側は水冷やヒートシンクで冷却されており、ここは常に20℃になっている。厚さはA層が2mm、B層が1mm、C層が3mmと、それぞれ異なる。各層で材料も違うため熱伝導率はA層が15W/(m・K)、B層が0.3W/(m・K)、C層が40W/(m・K)となっている。

図6 多層材料の熱対策(1)
図6 多層材料の熱対策(1)
層状に構成された材料の上面(20mm×20mm)に10Wの発熱が与えられている。下面側は20℃一定に保持されている。この状態での放熱対策を考えてみる。

 このままでは、上部の温度が100℃ぐらいになってしまう。温度を下げる対策として最も効果が高いのは、次の三つの中でどれか。

(1)一番厚いC層を半分の厚さにする
(2)熱伝導率が悪いB層の熱伝導率を2倍にする
(3)A層の厚さを半分にして熱伝導率を2倍にする

 これは、定量的な計算で求めることができる。計算に使うのは、伝導熱抵抗、熱抵抗の直列則、熱のオームの法則、である。

 まず、A/B/C層それぞれの熱抵抗を調べる。熱抵抗は、長さと断面積と熱伝導率から求められる。この例では、長さは厚さである。層状、つまり直列に並んでいるため、三つの熱抵抗を足すことでトータルの熱抵抗が求まる。熱抵抗が分かれば、熱のオームの法則により、熱抵抗(流れにくさ)に、そこを流れる熱流量10Wを掛けることで温度差が出てくる。

 実際にやってみよう。まず、熱抵抗を求める。厚さを、熱伝導率と断面積で割る。

A層の熱抵抗: 0.002/(15×0.02×0.02)=0.3333K/W
B層の熱抵抗: 0.001/(0.3×0.02×0.02)=8.333K/W
C層の熱抵抗: 0.003/(40×0.02×0.02)=0.1875K/W

 これにより、熱抵抗が大きいのは圧倒的にB層であることが分かる。電子機器では同じように、絶縁層の熱抵抗が一番大きくなりやすい。

 次に、直列則を使ってA層、B層、C層の熱抵抗を足す。

0.3333+8.333+0.1875=8.854K/W

 このうち8.333はB層のものだが、直列の場合は抵抗が一番大きい所に引っ張られてしまう。

 ここで、熱のオームの法則を適用する。8.854K/Wというトータルの熱抵抗に対して10Wが流れるので、温度差は、

8.854×10=88.5K

となる。下側は温度が20℃に固定されているので、温度は、

88.5+20=108.5℃

と、高温になることが分かる。

 そこで、対策を考える。

(1) C層の厚さを半分にすると、熱抵抗が0.09K/Wになるため、0.9K下がる

(2) B層の熱伝導率を2倍にすると、熱抵抗は4.2K/Wになるため、42K下がる

(3) A層の厚さを半分にして熱伝導率を2倍にすると、熱抵抗が0.083K/Wになるため、2.5K下がる

 従って、(2)の対策が効果的であることが分かる。

これはとても重要なことを示している。放熱経路が直列になっていたら、ボトルネックになるのは熱抵抗が一番大きい所であるため、そこへの対策を行わなければあまり意味をなさない。この例では、A層やC層への対策を施しても、ほとんど効果がないのである。

 つまり、パラメータは三つしかない。断面積を増やすか、厚さを薄くするか、熱伝導率を上げるか、である。

 ただし、実際には難しい。熱伝導率を上げようとすると、大抵は材料費も上がる。薄くすると絶縁耐圧や耐久性が減ってしまう。断面積を増やすことも構造的に難しい。