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多層材料の熱対策(2)

 同じ例を使って、もう一つの対策手法を紹介する。中央に穴を開けて熱伝導体を入れるという、上下をバイパスさせる方法である(図7)。

図7 多層材料の熱対策(2)
図7 多層材料の熱対策(2)
図6で考えた多層板の中央に穴を開け、熱伝導率の大きな材料D(直径5mm)を充填する。この状態での放熱対策を考えてみる。

 こうすると抵抗回路が、直列に加えて、横に並列で入る形になる。従って、並列合成の計算が必要になる。

 バイパス部Dの熱伝導率は180W/(m・K)と、かなり高いが、さらに温度を下げたいときに最も効果的な対策は、次の三つの中でどれか。

(1)B層の熱伝導率を2倍にする
(2)B層の厚さを1/3にする
(3)D部の熱伝導率を2倍にする

 まず、D部の熱抵抗を計算する。

D部の断面積:0.0052×π/4=1.963×10-52
D部の長さ:0.006m
D部の熱伝導率:180W/( m・K)
D部の熱抵抗: 0.006/(180×1.963×10-5)=1.698K/W

 先ほど計算したA/B/C層の直列熱抵抗8.854K/Wにこれが加わると、熱はD部を流れるようになる。

 直列の場合は流れにくい所で止まってしまうが、並列の場合は流れやすい所を流れるようになるのである。

 次に、並列合成の熱抵抗を計算する。A/B/C層の直列熱抵抗にD部の並列熱抵抗を合成する。A/B/C層の直列熱抵抗には、図6で計算した値(8.854K/W)をそのまま使わず、D部を設けた分のA/B/C層の面積減少を加味した値を使う。A/B/C層の面積減少を考慮すると、A/B/C層の熱抵抗は、次のようになる。

8.854×(0.02×0.02)/(0.02×0.02-1.963×10-5)=9.311K/W

 続いて、この値とD部の並列熱抵抗を合成する。

1/9.311+1/1.698=0.6963W/K
1/0.6963=1.436K/W

 そして、熱のオームの法則から上下の温度差を計算する。基準温度面(20℃)に対する発熱面の温度上昇(差)は、

1.436×10=14.36K

となる。従って、発熱面の温度は

14.36+20=34.4℃

である。

 数値を先の対策に当てはめてみよう。

(1)B層の熱伝導率を2倍にすると、1.7K下がる
(2)B層の厚さを1/3にすると、3K下がる
(3)D部の熱伝導率を2倍にすると、6.6K下がる

 これにより、今度は熱抵抗が小さい所にアプローチするといいことが分かる。正解は(3)である。

 次回は、対流による熱の移動について掘り下げていく。

出典:日経エレクトロニクス2013年10月14日号、pp.82-89
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
国峰 尚樹(くにみね・なおき)
1977年、早稲田大学 理工学部 機械工学科卒業。同年、沖電気工業入社。電子交換機、ミニコン、パソコン、プリンタ、FDDなどの冷却方式開発や熱設計に従事。その後、電子機器用熱解析ソフトXCOOL(後にStar-Cool)の開発、CAD/CAM/CAEおよび統合PDMの構築などを担当。2007年に同社を退職し、サーマル デザイン ラボを設立。電機メーカーを中心に、製品の熱設計やプロセス改革コンサルティング、研修などを手掛ける。(所属と肩書きは記事執筆当時のものです)