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機器開発を進める上で必要不可欠な熱設計。本連載では、熱設計の基礎である伝熱から基本的な熱設計手法までを説明する。今回は強制対流と、前回の内容を演習で学ぶ。前回はこちら

 今回は強制対流の熱伝達を見ていく。ファンを付けて冷やすといった強制対流の場合は、以下の式になる。

熱流量= 強制対流熱伝達率×物体表面積×(表面温度-流体温度) …(5)

 これにも、いろいろな熱伝達率の式がある(図5)。

図5 強制対流熱伝達の簡易計算式
図5 強制対流熱伝達の簡易計算式
強制対流の場合、熱流量の算出には強制対流に対応した熱伝達率を使う。流体の流れが層流域か乱流域かで、算出に使う熱伝達率が異なる。
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 強制対流の場合は、風の速度を上げていくと状態が途中で変わる。例えば、タバコの煙は風のない部屋の中であったとしても、最初は真っすぐ上がり、途中からぐちゃぐちゃになる。この真っすぐな所が層流で、乱れた所が乱流である。

 層流では、タバコの煙の粒子は一方向に流れている。対して乱流では、粒子があちこちに行ってしまっている上、時間とともに形が変わる。乱流は非定常流であり、時間とともに流れが変わってくるのである。プリント基板周辺の空気も同じく、層流が途中から乱流になる。

 放熱の視点からは、乱流化した方が好ましい。乱流化すると、温かい空気と冷たい空気が混ざり合うからだ。それにより、冷たい空気が壁面の近くまで来るため、熱が伝わりやすくなる。つまり、乱流化することで温度を下げられる。特に、流速が小さい場合や水冷式には乱流化がよく効いてくる。ただし、乱流化すると流体抵抗は大きくなるため、ファンやポンプの負荷は増大する。

 乱流化が始まる位置を強制的に作るには、例えば流体の通り道に突起物(乱流促進体)を付ける手段がある。強制空冷のヒートシンクでは、このような出っ張りを付けている例が見られる注4)。 

注4)自然対流でも乱流はあるが、電子機器の場合はほぼ乱流化しないと考えてよい。ただし、500 ~600℃など高い温度になると浮力が強まるため乱流化する。

 流れを止める力と、流れを推進する力。この二つのバランスで、乱流が始まる位置が決まる。流れを止める力は粘性力であり、壁面近くで強く働く。一方、流れを推進する力は慣性力もしくは浮力である。

 粘性力が強いと流れは押さえ込まれてしまう。互いに拘束し合うからだ。例えば、細い隙間や壁が近くにあると粘性力は強くなる。

 同様に、フィンとフィンの間を狭くすると粘性力が強くなるため、なかなか乱流化しない。一方、慣性力は速度なので、速度を上げていけば慣性力も上がっていく。 

 タバコの煙で考えると、流れ始めは熱源上部の空気がゆっくり上昇しており、流れの発生している領域も狭い。しかし、流れていくうちに、周囲の静止流体も引き込まれて流れの領域が広がってくる。そのため粘性力は低下する。一方、浮力によって加速された空気の流速は増大する。このため乱流化するのである。

 強制対流での熱伝達率の式は、層流と乱流でかなり異なる。まず、層流の式を示す。

層流平均熱伝達率 hm=3.86×(V/L)1/2 …(6)

 これは空気専用の物性値を入れており、3.86は自然対流の式(3)にある2.51と同じような意味合いである。

 乱流は実験的な式であり、係数も指数も変わってくる。

乱流平均熱伝達率 hm=6×(V/L0.250.8 …(7)

  簡易的に識別するには両方計算してみて、熱伝達率が大きい方を使えばいい。