PR

【演習2】空間広いと対流、狭いと熱伝導

 次に、大きさが200mm×200mm×20mmの平たい筐体に、それよりも小さい180mm×180mm×1mmの基板(発熱5W)を実装する場合を考える(図7)。

図7 【演習2】空間が広いと対流、狭いと熱伝導
図7 【演習2】空間が広いと対流、狭いと熱伝導
大きさ200mm×200mm×20mmの筐体内に180mm×180mm×1mmのプリント基板(発熱5W)を実装する場合、図中3パターンの放熱能力を考える。熱放射はないものとする。
[画像のクリックで拡大表示]

 ヒーターのようなものを考えていただければいいだろう。この基板の実装位置に関して、以下のうち正しい記述はどれか。なお、熱放射は無視してよいものとする。

(a) 基板は、上部(筐体上面から1mmの隙間)に置くと最も温度が下がる
(b) 基板は、中間部(筐体上面から7. 5mmの隙間)に置くと最も温度が下がる
(c) 基板は、下部(筐体上面から15mmの隙間)に置くと最も温度が下がる

 隙間が狭いと空気の流動が起こらないため熱伝導になる、ということがポイントだ。隙間が広いと対流が起こる。境目は状態や発熱量で変わるが、大体数mmである。それよりも狭いと空気が動かなくなり、それよりも広いと流動する。定性的だが、十分離れていると空気が回り、熱を運んでいく。これにより、部品の熱が筐体の上面に伝わり、そこから熱が逃げて温度が下がることになる。

 上述のように、隙間が狭いと熱伝導になる。熱伝導の場合の熱抵抗は、空気層の厚み/(伝熱面積×空気の熱伝導率)なので、(a)では

熱抵抗(1mm) =0.001/(0.18×0.18×0.03)=1.03K/W

となる。(b )は

熱抵抗(7.5mm) =0.0075/(0.18×0.18×0.03)=7.7K/W

で、かなり大きくなる。

 一方、(c)のように隙間が15mmであれば、対流は十分起こると考えられる。隙間が広い場合は、対流の熱抵抗が二つ(基板面⇒空気、空気⇒筐体上面)になる。熱伝達率を10W/m2Kとして計算してみると、

基板から空気までの対流熱抵抗
  =1/(基板表面積×自然対流熱伝達率(水平))

空気から筐体までの対流熱抵抗
  =1/(筐体表面積×自然対流熱伝達率(水平))

熱抵抗(15mm)
  = 1/(0.18×0.18×10)+1/(0.2×0.2×10)=5.6K/W

 となる。このため、(a )の1 mm が一番低い温度になると分かる。(b)と(c)では、恐らく(b)の温度が一番高くなる。流動がほとんどないためである。

 熱伝達率は、手動ではあまり正確に計算できないので、熱流体解析シミュレーションを用いて厳密に計算し、基板温度を算出してみた。その結果、周囲温度35℃のとき、

(a)隙間1mm:基板温度56℃
(b)隙間7.5mm:基板温度72.5℃
(c)隙間15mm:基板温度59.6℃

となった。

 これにより、温度が一番高い(b)を避けなくてはならないことが分かる。5~7mm程度の隙間は、対流が起こりにくい上、熱伝導には空気層が厚すぎるために熱が逃げない。避けたい距離である。部品が載っているとそのぐらいの隙間になりやすいが、その場合は、あえて接触させて熱伝導で熱を逃がす方がいい。

 次回は、熱放射のメカニズムや効果について説明する。

出典:日経エレクトロニクス2013年11月11日号、pp.98-103
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
国峰 尚樹(くにみね・なおき)
1977年、早稲田大学 理工学部 機械工学科卒業。同年、沖電気工業入社。電子交換機、ミニコン、パソコン、プリンタ、FDDなどの冷却方式開発や熱設計に従事。その後、電子機器用熱解析ソフトXCOOL(後にStar-Cool)の開発、CAD/CAM/CAEおよび統合PDMの構築などを担当。2007年に同社を退職し、サーマル デザイン ラボを設立。電機メーカーを中心に、製品の熱設計やプロセス改革コンサルティング、研修などを手掛ける。(所属と肩書きは記事執筆当時のものです)