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機器の熱等価回路と熱抵抗

 以上の話を、等価回路図で描いてみる(図2)。図の左から右に熱が逃げているとすると、半導体チップで発生した熱はまず、部品の中を熱伝導で伝わって表面まで進む。部品表面まで来たら、対流で空気に逃げる、熱伝導で基板に逃げる、熱放射で筐体に逃げるという、前述した三つの経路に分かれる。

図2 機器の熱等価回路と熱抵抗
図2 機器の熱等価回路と熱抵抗
電子機器の熱源(チップ)から外気までの放熱経路は、11種類の熱抵抗によって構成される。熱対策とは、この中のどこかの熱抵抗を下げることである。なお、枠内は各熱抵抗の熱対策例を示す。
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 通風口が開いていたりファンが付いていたりすると、物質移動によって熱が運ばれ外に出ていく「換気」が非常に多くなる注2)。例えば、デスクトップ・パソコンは、換気による対流で熱を逃がすものが多い。この設計は割と楽だ。プリント基板の設計者はとにかく空気に逃がすことを考え、筐体の設計者は空気の温度が上がらないように早く外に吐き出すことを考えればよく、それほど連携が要らない。従って、ばらばらに仕事をしていても、目的さえしっかり果たせば比較的トラブルもなかった。

注2) 換気については、本連載の前々回を参照されたい。

 しかし、通風口を大きく開けられない、密閉にする必要がある、狭いのでヒートシンクも付けられない、といったときは難しい。これらの場合、熱伝導でプリント基板に逃がし、プリント基板から筐体に伝え、筐体表面から逃がすという経路になる。こうなると、熱設計の仕方が全く違ってくる。

 空気の移動で熱を運ぶ場合は、流体は熱をつかんで出ていくことから風を流すだけでいいが、熱伝導で運ぶ場合は、物体同士を接触させなくてはならない。そのため、熱伝導の経路を作り込む必要がある。

 図2では経路を簡単に1本線で描いているが、実際には落とし穴が結構ある。例えば、連なる物体に熱が伝わる場合(直列伝導)は、途中1カ所でも熱抵抗の大きな所があるとそこで熱の流れが止まってしまう。このため、経路上に熱抵抗の大きい所を作らないようにしなくてはならない。

 例えば、部品の熱を配線に逃がして、配線からビアを通して裏側の配線に逃がし、そこからシャーシ(フレーム)に伝えるような、LEDやECUなどでよく取られている形がある。これは、熱伝導が続いているため、どこかがボトルネックになりやすい。ビアが足りなければビアが、部品からビアまでの距離があればそこが、裏側の接触が悪いとそこが、それぞれボトルネックになってしまう。なお、並列に放熱ルートが形成されているときは、熱抵抗が一番小さい所を熱が通っていく。

 通風口がないと空気に伝わった熱がもう一度対流で筐体に伝わる。つまり対流熱抵抗が直列に二つ入るため、放熱効果が小さくなる。さらに、間が狭くなると対流も起こりにくいため、あとは空気の伝導になってしまう。これらの条件では、対流を用いた放熱経路で熱が通りにくくなっている。従って、密閉の場合、熱を内部空気に逃がすという発想は捨てて、筐体に逃がすことを考えた方がいい。

 熱伝導も対流も放熱効果が小さい場合は、最後の手段として熱放射が効いてくる。ここで注意したいことがある。まず、対流と熱放射は両方とも表面積依存であることだ。そして、熱は最終的に筐体から対流と熱放射で外気に逃げるが、筐体の温度が高いと、筐体内の部品の温度は下がらないことにも留意したい。