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 顧客が店員や営業担当者に土下座を強いることはあり得ても逆は普通ないはずだが、先日その光景を目撃した。サービスの提供者に向かって対価を支払った顧客が続々と土下座をする場に居合わせたので報告する。

 土下座といってももめごとやそれに絡む怒りがあったわけではなく、顧客は喜んで頭を下げていた。期待をはるかに超える圧倒的な体験ができたことが大きい。どうしてそこまで顧客を満足させられたのか、その術を実例から学んでみたい。

誰にとっても顧客は存在する

 顧客を喜ばせることは大事であり顧客満足度の向上や顧客志向といった言葉が唱えられている。日経クロステックの読者の皆さんならどのような立場にいても顧客がいるはずだから、満足してもらうことを考える必要がある。

 例えば企業情報システムの開発を請け負う仕事をしている方にとっては発注者が顧客になる。発注者にとっては開発する情報システムを実際に使う社内外の関係者が顧客になる。社内外の関係者が情報システムを使って業務をこなし世界の消費者に製品ないしサービスを提供しているとしたら、消費者が関係者の顧客になる。

 顧客が満足する体験とは何か。中身が充実していることだ。めったに経験できない何かを見聞きし、触れ、経験できれば感動する。体験そのものはそれほど感動するものではなかったとしても、得られた効果が絶大であったなら顧客は満足する。

 前者は消費者など個人を対象にした体験に当てはまる。おいしい料理、心を揺さぶる演劇や文学、達成感のあるスポーツなど。後者については企業も対象に入ってくる。新しい情報システムを動かし仕事のやり方を変えた結果、受注から納品までにかかる時間を半減できたら顧客は大いに喜ぶ。

 前者が企業に、後者が個人に当てはまる場合もある。企業間の協業を支援するツールを初めて入れた企業は効果もさることながら、社外の仕事相手と迅速にやり取りができること自体に感動する。面倒な買い物が一瞬で終わり商品がその日に届く体験をした個人は時間短縮効果に感心する。

 となると顧客満足度を高める勘所は個人向けであっても企業向けであってもさほど変わらないことになる。今回紹介するのは個人向けエンターテインメントの事例だが「顧客を土下座させる術」は企業向けの仕事をしている人にとっても参考になる。