2022年4月1日以降、インターネットを検索してセットリストを確認するのが日課のようになっている。セットリストとはライブコンサートで歌い、演奏する曲とその順番を指す。要するに曲順だと思っていただいて差し支えない。
誰のどのライブの曲順を調べているのかと言えば、広島出身の3人組アイドル、まなみのりさである。大変残念なことに、まなみのりさは2023年4月1日の中野サンプラザ公演をもって解散する。4月1日開催なので解散は冗談だと言ってほしいが、その可能性はなさそうだ。
解散はほぼ1年前の2022年3月31日に発表され、解散までの1年間で約100回のライブをすることが宣言された。
関連記事: 1番難しい「何かをやめるプロジェクト」に挑む3人組アイドルの決意ライブコンサートはその場に行ってこそ意味があるとはいえ、行けない場合の方が多い。そういうときは参加したファンが動画(まなみのりさから撮影と公開の許可を得たもの)や曲順を投稿してくれるのでそれらを視聴したり読んだりする。ライブ好きの方なら分かると思うが、曲順を眺めながらライブの光景を想像するだけでも結構楽しい。
ライブの要は曲順
曲順はいわばライブコンサートの設計図であり、すべてが集約されている。ライブ専門の音楽プロデューサーで、絢香やCHEMISTRY、東京スカパラダイスオーケストラなど数多くのライブを手掛けてきた本間律子氏も、心奪われるライブにできるかどうかは曲順次第と言っていた。
本間氏がライブをプロデュースする場合、ミュージシャンとじっくり話し、ライブのコンセプトを固める。コンセプトを具現化する曲順を考え、曲のアレンジ、歌唱や演奏、演出や照明といった様々なことを念入りに詰めていく。細部を決めていく一方で、ライブ全体を見直し、必要があれば曲順を入れ替える。
まなみのりさの場合、曲順は3人が相談して決める。一言でライブといっても、単独公演だけでなく他のアイドルとの共演、フェスティバルや催事への出演、無料で開く定期公演、CDやDVDの発売イベントといった様々な形態がある。それぞれ狙いや公演時間が異なり、歌える曲数も違う。
会場もホール、ライブハウス、屋外、CD店などがある。それぞれのライブに合わせてベストアルバム『LAST』に収められた35曲からそのつど曲を選び、順番を決めていくという。35曲は今歌える3人の持ち歌のすべてである。
単独公演でも周年記念なのか生誕祭なのかによって曲順は変わる。他のアイドルとの共演になると、自分たちの前後に出るアイドルの持ち味に合う曲順にして、両者がつながる流れをつくることもあれば、あえて全く違う感じにして来場者にまなみのりさの特徴を強く印象づけることもある。
2023年1月14日に開かれた『まなみのりさ最後の広島大感謝祭』は3人にとって最後の広島単独公演になった。リーダーのみのり氏によると、「笑顔でいっぱいの楽しい時間にしたい」と考え、観客が笑顔になれる明るい曲を選んだという。次に「自分たちが伝えたい想いを込めた曲たち」「“今のまみり”のライブがいちばん伝えられる曲たち」を入れていった(まみりとはまなみのりさの略称)。
3人は作詞作曲こそしないが、曲を作ってもらう際に「今こういう想いを届けたい」と作詞者や作曲者に伝えてきた。さらにベストアルバムの最後に入っている最新曲かつ最終曲『栞』(しおり)は初めて3人が歌詞を書いた。
この曲はファンへ感謝を伝える壮大なバラードだ。ファン歴が長ければ長いほど真摯な歌詞に打たれてしまい、2022年8月の初披露の直後には「つらすぎるのでもう歌わないでほしい」といった趣旨の意見までネットに複数投稿された。
「観客が笑顔になれる明るい曲」ではないが「自分たちが伝えたい想いを込めた曲」かつ「“今のまみり”のライブがいちばん伝えられる曲」として、栞は広島大感謝祭の本編最後から2番目に歌われた。その直後にファンによる人気投票で1位になった代表曲を歌って本編を終えたためか、「今回は栞の歌詞を受け止められた」というファンの声が上がっていた。ちなみに筆者は人気投票で栞を1位に推したがベストテンに入らなかった。