LINEのデータ管理方法が怪しかったというので騒動になっている。アプリケーション(アプリ)をすぐに引っ込めた自治体も多数出てきた。
実は「LINEを無防備に使う××、すぐやめる××」という題名を本記事に当初付けていた。××には人を批判する単語を入れていた。だがここで言いたいのはLINE本体や、LINEを使ってアプリを提供した企業や自治体への批判ではなく、アプリを世に問う策。そこで題名を変えることにした。
不特定多数の人が利用するアプリにかかわる原則について、日経コンピュータ誌に何度か書いたのでそれらをまとめてみる。執筆にあたっては情報システムのグランドデザインを手掛ける札幌スパークルの桑原里恵氏から助言を受けた。
「危ないから使わない」というリスク回避策は成り立たず
多くの人がモバイルデバイスを持ち、インターネットを介してつながる。これはもはや新たな社会基盤であり、LINEはそうした基盤を担うサービスの一例である。アプリの実現にこうした基盤を利用すると、新たな体験を提供できる可能性が高まる。一方でリスクもつきまとう。便利だからといって無防備に使うのでなく相応の工夫が求められる。
工夫をせずにリスクがあると批判されて使用をやめ、アプリを引っ込めてしまうのはいただけない。それでは絶対安全だと保証されたサービスや技術が出てこないとアプリを提供できなくなる。だが絶対安全なものなど世の中には存在しない。日経コンピュータに次のように書いた。
「多くの人々や事業者をつなげ、データを蓄積していく、LINEのような社会基盤を生かして情報システムを作る場合、『危ないから使わない』というリスク回避策は成り立たない。目指す姿があり、そこにLINEを組み合わせる。普及しているLINEだから選んだのに利用を避けたら価値は得られなくなる」
社会基盤の可能性を生かして魅力あるアプリを提供しようとするなら、技術に基づく安全策を用意して使っていくしかない。社会基盤を使わないならリスクは回避できるが可能性もなくなる。それならアプリを出す意味がそもそもない。