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 「一番欲しいのは30代後半から40過ぎくらいで、新しいことを学びやり抜ける人。その年齢なら経験を積んでおり知識もある。学ぶ力があれば相乗効果が出てめちゃくちゃ強くなれる。とはいえ35歳の壁のようなものがやはりある。もっと若い人でないとなかなか難しいところもある」

 屋内外の人流データの収集、分析、マーケティング支援を手掛けるスタートアップ、unerry(ウネリー、東京・千代田)の内山英俊社長はこう語る。

 同社の求人ページを見るとデータサイエンティスト、データエンジニア、カスタマーサクセス(データ分析に基づく増収策を担当顧客に提案)など複数の職種が並ぶ。業務内容や仕事の魅力、求める人物像、必須の経験、歓迎される経験などが詳しく書かれている。ただし1次面接を担当する内山社長は「新しい未来を率先してつくってくれる人かどうか」を何よりも重視する。新しい未来を率先してつくるには学ぶ力が欠かせない。

自分で判断して動ける人を採用

 自ら学び、率先して動く人を採ろうとしているのは「unerryは民主的でありたい」という内山社長のこだわりがあるからだ。「民主的」とは「何をするかを含め仕事の判断は各社員が自分で下す」という意味である。

 「できる限りルールをつくらず、組織の情報を開示する。フラットな組織にして管理職の階層を設けない。今後の経営を考えるオンライン合宿には全員が参加して話し合う。経営方針を決めたいという人が出てきたらその人が決める」(内山社長)

 内山社長の流儀として「こういうことを私はやりたい、そのために入ってくれ」あるいは「私に付いてこい」とは言わない。

 まもなく40人になる社員と、密接な協力関係にある社外のエンジニアなどを合わせ、ざっと50人が民主的なやり方で動く。スターアップらしく若手社員もいるが、海外のエンジニアや大企業から移ってきた中堅社員もいる。

 事業規模は非公開だが年商10億円の大台に乗りつつあると推定される。英Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)の「Asia-Pacific High-Growth Companies 2021」によれば2016年から2019年にかけてのunerryの売り上げ成長率は264.8%だった。コカ・コーラ ボトラーズジャパン、電通、NTTデータ、三菱商事といった大手顧客との資本業務提携も果たした。

 これだけの成果を出した50人のチームに中間管理職はいない。役員として内山社長のほか、COO、CFO、CTO、CMOがいるだけだ。例えばエンジニアはCTOが取りまとめており、CTO以外のエンジニアに上下関係はない。

 事業の中心は人流データを分析するためのダッシュボードサービス(月額制)である。顧客自身が分析結果に基づいて増収につながる洞察を得るばかりではない。unerryは顧客ごとにチームを組んで、洞察に基づいて増収策を提案。その一環として広告配信も手掛ける。

 「顧客体験をアップデートする」を合言葉にしているため、「広告配信だけをやってくれ」といった依頼に対しては「先方の言う通りにするだけではアップデートにつながる新たな仕事ではない」と現場が判断し、断ることもある。

 人流データは屋外の場合GPSから、屋内については店舗やビルに設置されたBluetoothビーコンから収集する。unerryはビーコン設置先と提携しており、200万個を超えるビーコンをつないだ仕組みを構築している。エンジニアのチームはこうしたプラットフォームを支えるとともに、必要があれば顧客ごとのアプリケーションを開発する。「こういう仕組みがあれば人流データをもっと面白く使える」とエンジニアが考えたことに取り組む自由研究も実施している。一例としてボイスユーザーインタフェースのアプリケーションを米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Google(グーグル)のスマートスピーカー向けに開発した。その経験に基づき、車の運転中に店舗の混雑予測を聞ける新サービスを開発、2021年4月15日から提供している。

 経営合宿と呼ぶオンライン会合を実施するにあたり、「よかったら参加してください」と声をかけたところ社員全員が参加した。内山社長はunerryの課題を挙げ、大まかな方向を示すものの「こうしよう」といった具体的な指示は出さない。集まった社員が議論し「こういうふうにやっていきたい」と民主的に方針を決める。

 2021年3月にあった直近の経営合宿では「自分たちの文化を言葉にする」グループワークを内山社長以外の全社員で実施した。「10年後の未来を創造し続ける」「自分起点でやり抜く」「本質的課題を解く」「信頼と共感」といった言葉が出てきた。「自分起点でやり抜く」ことが同社の言う「民主的」である。