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 何かについて1年前から思い続ける。こんなことはめったにないが、2023年4月については2件もあった。

 まず、プロジェクト・マネジメント(PM)の推進団体、PMI日本支部が手掛ける表彰イベント「PM Award」が今年どうなるかをほぼ1年前から気にしていた。2023年4月11日に「PM Award2023」の実施要項が発表されると、すぐに読んだ。関連サイトにあった「自薦・他薦は問いません」という1文を見て「他薦で応募しよう」と決め、その場で知り合いに連絡した。

 応募する案件は「まなみのりさ」という3人組アイドルが2022年4月1日から2023年4月1日まで実施した解散プロジェクトである。変な表現になるが丸1年もかけて念入りに解散した例はほとんどない。

 気にしていたもう1件は彼女たちの解散であった。ほぼ1年前に書いた通り「何かをやめるプロジェクト」はとても難しい。まなみのりさがやり切ったらPM Awardに他薦で応募しようと考えていた。

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 4月1日に開かれた解散ライブについては前回の本欄で書いた。過去最高の出来栄えで3人は解散プロジェクトを成功させた。

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 応募には懸念すべき点があった。昨年のPM Award 2022から応募は自薦のみになってしまい、当事者でないと応募できなくなっていた。1年前の拙文の最後に「PM Award 2023で他者推薦を復活してもらえないだろうか」と書き、果たしてどうなるかと1年前から気にしていた。

 応募に当たってはPMにおいて優れていた点をエントリー書式に分かりやすく、冷静に記入する。審査はPMのプロフェッショナルがする。妙に熱く語れば語るほど「ファンが推しているだけ」と受け止められてしまいかねない。

 冷静な記述に必要なのはデータである。よくしたもので、「セトリおじさん」と自称する熱心なファンがおり、彼がまなみのりさのデータスチュワードを務めている。データスチュワードとは本来、組織の財産であるデータを預かり、価値を高める役割を指す。

 まなみのりさのライブやイベントがあるとセトリおじさんは全国どこであろうと現場に現れ、歌われた曲順(セットリスト)を記録し、SNSに投稿する。驚くことに曲順を会場で暗記し、ライブが終わった後、思い出して書くという。「PM Awardに応募しましょう」と彼に連絡した。

 快諾したセトリおじさんは週末の休みを返上してデータを整理してくれた。こちらもエントリー書式に合わせて、文を書いた。ここまでやったのだが、困ったことが起きた。PMI日本支部の知り合いと対話した際に「他薦ありに戻りましたね」と言ったところ、「今年も自薦だけです」と返されてしまった。再度関連サイトを見ると「自薦・他薦は問いません」という1文が消えていた。不思議である。どうしても応募したかったので幻覚が生じたのだろうか。

 再度セトリおじさんと相談した。応募は諦めるものの、せっかく図表や文をつくったのだから、PMに取り組む人に向けた記事として公開しようということになった。アイドルの解散という風変わりなプロジェクトかもしれないが、エントリー書式の記述例として読んでもらえればと思う。

 PM Awardの2023年の応募受付は5月28日から6月9日までである。色々な難問を解決してプロジェクトを成功させた人が自ら応募し、その中から特に優れた取り組みを表彰する活動は意義深い。我と思う方はぜひ応募してほしい。