顧客から「奇跡」と賞賛されるほど素晴らしいチームがあったとして、その一員が仕事から離れざるを得ない状況になり、しかもそれを株主総会で追及されてしまったら、チームメンバーや上司、経営者はどうしたらよいか。そして顧客はどう受け止めたらよいだろうか。
日経 xTECHの読者はIT、エレクトロニクス、自動車、機械、建築、土木といった分野の研究者、設計者、開発者、製造担当者、保守技術者など多岐にわたる。ご自分の所属している産業界や業務分野のことを思い浮かべつつ本稿を読んでいただければと思う。
素晴らしいチームとは何か
素晴らしいチームとは何か。顧客が喜ぶ、良い仕事ができる集まりであろう。メンバーが自主的に集まる場合もあれば所属先の人事によって結成される場合もある。全員の所属先が同じこともあれば複数の所属先から集まる形もある。
何か例を出したいのだが、メンバーの数が多いと書きにくいので以下では3人組のチームにする。3人は同じ会社に所属する同僚であり、チームは上司の指示で結成された。チームの活動方針、成果物の企画、設計、実行管理は全て上司が仕切ってきたが、何よりも3人の卓越した才能と努力によって多くの顧客から支持されるようになった。顧客は日本だけではなく海外にも広がっている。
3人組の中心人物の力は突出しており、どのような状況においても顧客が満足する、期待以上の成果を必ず届ける。客先では堂々としており、対等の関係どころではなく客を圧倒してしまう。その中心人物あってのチームではあるが、顧客を満足させる成果物をたった1人で作れるわけではない。他の2人のメンバーは中心人物にないものを持っており、互いの力をうまく組み合わせることができる。
1人は実に気が利く。成果物を届けるにあたり現場で急に問題が生じることは日常茶飯事だが、臨機応変な対処で切り抜けるため、「プロですね」とわざわざ顧客から言われることが多い。何より気さくであり、顧客とのやり取りが上手い。どんな顧客のどのような反応に対しても笑顔で手早く応じる。分からないことがあれば「今日のお客さんはよく分かりません」と正直に言ったりするが顧客は怒らない。中心人物はあまりに堂々としているため一見分からないが案外、質疑応答に弱かったりする。
もう1人は控え目で奥ゆかしい人という印象を与えるが、仕事における活動の切れ味は抜群である。いざというときに上司に直言する度胸もあるようだ。堂々と、てきぱきと、ことを進める他の2人と比べると仕事のやり方に若干のタイムラグがあるように見えるがそれは性格ないし態度がもたらす錯覚にすぎない。力量があるのに何か言われると下を向いてしまう姿勢をこよなく愛する顧客は多い。
前述したように3人組は組織人でもあるから仕事の方針は上司が決めているが、3人組がいないと何も始まらないわけで仕事について相応の意見も言う。メーカーで言えば優れた製品の根幹を1人で作ってしまう設計・開発担当者、最終成果物に仕上げるために要所要所に気付き顧客と意思疎通できる実装担当者、他の2人から一歩退き、マイペースで仕事をしているように見えるがその人がいないと良い成果物にならない検証担当者といった役割分担だろうか。