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 「日本経済の30年に及ぶ停滞の原因は政府ではなく国民でもない、経営者である」。経済同友会代表幹事である櫻田謙悟SOMPOホールディングス グループCEO取締役代表執行役会長は、2022年7月5日に開かれたシンポジウムにおける講演の当初、こう言い切った。

 シンポジウムのタイトルは『日本企業と経営リーダーのサスティナビリティ』。山城経営研究所が創立50周年とKAE会の35周年を記念して開催したもの。KAE会とは山城経営研究所の経営幹部育成フォーラムを受講した経営者によるコミュニティーである。

 櫻田氏が冒頭の発言をしたのは、自身が経営者でありシンポジウムに集まった聴衆が経営者であったからだ。日本を停滞させた責任は自分たちにあり、経営者一人ひとりが将来に向けて改革を進めなければいけない、という主張である。

 政府や国民に責任はないとしているわけではない。実際、櫻田氏は「もはやこれしかない」取り組みとして、「生活者1人1イノベーション宣言」を挙げた。一人ひとりの生活者が何を変えるのか宣言し、実行していこうという呼びかけである。ここでいう生活者には国民も政治家も経営者も入る。

 山城経営研究所の橋本孝之社長が「本日出席された方は『日本を元気にするために私は〇〇します』という宣言を考えてほしい」とシンポジウムの開会挨拶で述べたことについて櫻田氏は「大賛成」と応じていた。

 日経クロステックの読者も「1人1イノベーション宣言」あるいは「日本を元気にするために私は〇〇します」といったことを考えてはどうだろう。そのヒントになりそうなシンポジウム登壇者の発言を選んで紹介する。

完成予想図を自分で描く

 「日本の将来の完成予想図を自分たちで描く。ふわっとしたものではなく、完成したかどうかを判断できるメトリクスを付けて示す」(櫻田氏)。目指す社会の姿を自ら描けば、それに向かって人材育成や技術振興、スタートアップの育成といった各論を進められる。ところが「現状は各論ばかり議論され、しかもいまだに『追い付け、追い越せ』という姿勢のまま」と櫻田氏は指摘する。

 企業も自身の完成予想図を示す。「将来はこう、というストーリーを示さないと企業価値は高まらない」(櫻田氏)。完成予想図やストーリーがあればそれを頼りにかじ取りができる。

 「事業構造と情報によるマネジメントへ移行する。アーキテクチャーを整備し、生データを活用するとともに、事業の実態を見に行き、自分も参加する」(エル・ティー・エスの樺島弘明社長CEO)。ここでいうアーキテクチャーはエンタープライズアーキテクチャー(EA)を指す。EAはまさに完成予想図である。

 部や課、プロジェクト、個人においても同様に完成予想図を自分で描く必要が本来ある。プロジェクトチャーターはメトリクス付きのプロジェクト完成予想図とみなせる。