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 音楽ライブのインターネット配信を題材にいわゆるオンラインの可能性を考えてみた。オンラインで何をどこまでできるのか、日経クロステック読者の方々にとって共通の課題だろう。

 なぜ音楽ライブかというと、楽しみにしていた公演が続々と延期や中止になり、代わりに実施されたライブ配信を2020年6月から8月にかけて計6公演視聴し、色々と思うことがあったからだ。

 参加した6件のライブ配信を振り返りつつオンラインの良さを列挙してみる。各公演はいずれも素晴らしかったが、音楽ライブを語る語彙が足りないこともあり中身にはあまり触れない。人物の敬称は略す(当初「氏」を付けて書いてみたが、何だか変な感じがした)。

 オンラインの良さと書いたものの、自宅にいてパソコンから視聴することとライブハウスまで出かけて歌と演奏を見聞きすることは全く別の体験である。音質と音量と音圧は比較にならない。振動は伝わらないし無観客ライブ配信の場合は歓声も聞こえない。

 ミュージシャンが歌い、演奏しているまさにその時に見聞きしているわけだが、ディスプレー越しになるためライブを収録した映像ディスクを見ている気分になる。今回参加したどの公演もカメラワークは秀逸だったが、ライブ会場にいる人間の目にそうした光景は本来見えない。

 やはりライブハウスに行きたくなるが、そもそも公演が無く、あっても観客を入れず配信だけにせざるを得ない現状が続いている。ライブハウスで従来通りに開催される日を待ちつつ、当面の選択肢であるライブ配信の長所を考えてみた。

オンラインなら何回でも参加できる

配信その1:6月28日午後8時 『頭脳警察50 未来への鼓動』 渋谷La.mama (配信システムはTwitCasting)

 結成50周年を迎えた頭脳警察が彼らにとって初めての無観客有料ライブ配信を実施した。ライブ名の『頭脳警察50 未来への鼓動』は50周年を記念して製作され、7月18日に公開されたドキュメンタリー映画の題名でもある。映画のエンドロールのためにつくられた新曲『絶景かな』がこのライブ配信で演奏された。

 初のライブ配信についてリーダーのPANTAは笑いながら「“背信”行為」と語っていた。ライブは観客とミュージシャンの対話の場だから観客がいないところで一方的に演奏するのは一種の背信行為かもしれない。

 ただしライブ配信の場合、公演終了後の一定期間、録画を何回でも再生できる。ライブの映像ディスクを視聴するのと同じことだが見直せるのはありがたい。

 新曲『絶景かな』は4月4日に予定されていた公演『頭脳警察 2020 1st デビューLIVE完全コンプリート』で初披露されるはずだった。頭脳警察のデビューは1970年4月3日、場所は神田共立講堂だった。50年後に場所を二子玉川GEMINI Theaterに移し、デビューライブを曲順通りに再現、その後『絶景かな』を含む最新曲をお披露目することになっていた。

 チケットは買えたものの4月4日の公演は7月25日へいったん延期された後、11月1日へ再延期になった。11月の公演では昼と夜の2回ライブをして顧客を振り分ける。チケットは完売しておりその人数を一度に入れると密集してしまうので公演回数を増やすことになった。マスク着用でも検温でも手の消毒でも何でもするので、11月1日は何とか開催してほしい。