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 「このところ取引先からの支払い遅れが多発しています」

 1カ月ほど前、2020年8月のお盆休みに入る時期に知り合いがこんな電子メールを送ってきた。彼はメーカーの管理職で機器やその関連サービスを取引先に売り込む立場だが、売掛金の回収も仕事である。

 こちらは家にいて仕事をしていたが、メールが気になったので連絡を取り、彼と話した。

中小企業は大丈夫、遅れるのは大企業

 「新型コロナウイルスの影響で中小企業の調子が悪いのでしょうか」

 「いえ、中小規模の取引先は通常通りです。支払いが遅れるのはいずれも大企業です」

 「なぜでしょう」

 「問い合わせてみたところ遅れの理由はどこも同じでした。テレワークに移行した際、紙を使っていた従来のやり方をやめ、新しい情報システムを導入した。ところが担当者が支払い手続きをしていなかった」

 「よく分かりません」

 「新しいやり方、新しいシステムへの切り替えが周知徹底されていなかったということですね。全面的にテレワークに切り替えた、と新聞などに大きく報道されたあの会社やこの会社で支払い遅れが多発しています」

 「新システムをよく分かっていなくても担当者の頭の中に支払い時期は入っているのでは。請求書を確認した後、仮に担当者自身ではなく事務担当者へ起票を依頼したとしても、最終承認はしますよね」

 「テレワークではどうしても人と人のコミュニケーションが弱くなりますから、お願いしたつもりが伝わっていなかったとか、お願いされたほうが新しいやり方を知らなかったとか、そういうことがありそうです」

 「大企業になると案件の数も多いから、いちいち覚えていないのかもしれませんね」

 「やむを得ずテレワークをするようになってから、支払いだけではなく色々な実務の抜けや漏れが明らかに増えています。例えば先方が配送の手配を忘れてしまい所定の物品が所定の期日にこちらへ届かないとか。以前が完璧だったというわけではないですが、この4月以降は毎月必ず何か起きますね」