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「システムには後から適当にデータを入れる」

 現場はどうしたらよいのか。ここでExcelが出てくる。

 「企業のシステムはこんなものでしょう、どこでも。全員の事情に合わせたシステムの開発なんて不可能。だから現場は仕事で必要になるデータをExcelで管理し、メールを送り、仕事を回す」

 Excelのデータをシステムにどうつなぐのか。

 「システムには後から適当にデータを入れておく。それが当たり前。システムへの入力は派遣さんに頼んでやってもらう。だから人は減らない」

 そのようなデータが入ったシステムで経営陣や幹部は経営判断ができるのだろうか。

 「大丈夫、判断の結果が出る頃に判断した人は異動している。経営判断の影響も無ければ意味も無い。3年くらいで経営陣や幹部は入れ替わる、何回か繰り返せばどこかで正解が出るかもしれない」

 彼のメールは次のように結ばれていた。

 「みんな、システム屋に騙されないでExcelで仕事をし続けよう! 目指せ、Excelで生産性向上!」

生産性の問題を誰が解くのか

 呼びかけにあった「みんな」とは現場で仕事をしている人を指す。経営陣、情報システム部門、システム開発企業は入っていない。

 彼がいる状況を別の視点から見ると8月30日付本欄で紹介した次の例とそっくりである。

 「以前にいた職場は非常に多くの人が間接部門にいた。そのわりに人手不足で常にかつかつの状態。よく見ていると無駄なチェックが多く、システム間の無駄な転記も多かった。グループウエアとExcelで一見システムになっているようだが、その実、中途半端なワークフローとExcel帳票があるだけ。しかもExcel帳票を見て、いちいちERPパッケージに手入力していた。手入力だから転記や入力に間違いが起きる」

 上記のような状態にあるなら、AI、CRM、RPA、何を入れても生産性は上がらない。どうすればいいか。8月9日付記事で次のように書いた。

 「結局、誰かが企業内外の仕組みを俯瞰した上で、作業の内容や流れを見直し、見直したやり方に合う新しい情報を適宜出力できるシステムを用意しない限り、生産性は向上しない」

 これを読んだ知り合いのエンジニアは「誰かなどいない。そんなことは不可能」と思ったのであろう。

 日経 xTECH読者の誤解を避けるために書いておくと、彼はExcelとメールだけで生産性が上がると本気で言っているわけではない。エンジニアだからシステムの重要性は分かっている。理想は分かるが現状はこうだと言いたかったに違いない。

 生産性の問題を誰が解くのか。経営陣が乗り出すとAIやRPAの話になってしまう場合がある。現場は本業で忙しくそれどころではない。やはり情報システム部門に期待したいのだが、彼からまたメールが来るかもしれない。