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トヨタでもやれたのだから他の企業もできるとは言えない

 ここからこの場を借りて反省を書く。2025年の崖レポートに次のくだりがあった。

 「国内企業では、大規模なシステム開発を行ってきた人材の定年退職の時期(2007年)が過ぎ、 人材に属していたノウハウが失われ、システムのブラックボックス化が進展している」

 懐かしいと書いたら叱られそうだが、これは「西暦2007年問題」の話である。上記引用箇所と同じ主張を2003年4月9日にコラムの中で書いていた。

 15年以上前に書いたこのコラムで2007年問題を次のように定義していた。

 「企業の情報システムを支えてきたベテランSEが続々と引退している。このため、情報システムがブラックボックスになりつつある」

 その後、この問題にどう取り組んだらよいか、色々な方に意見を伺い、事例を取材し、「ブラックボックス問題を解決する一番分かりやすい方法は、古くなった情報システムをすべて作り直してしまうこと」と書いた。2006年7月26日に公開したトヨタ自動車の事例を紹介するコラムの一節である。

 トヨタが「古くなった情報システムをすべて作り直し」たプロジェクトを始める直前、トヨタの最高幹部は情報システム部門に「このプロジェクトを失敗したらトヨタはどうなるのか」と尋ねた。

 答えは「潰れます」であった。自動車の設計、開発、製造、保守に関わる部品表データベースと関連アプリケーションをすべて作り直すため、失敗するとトヨタは車の設計、開発、製造、保守ができなくなり、倒産するという理屈であった。興味深いことにそれを聞いた最高幹部は「そうか、しっかりやってくれ」と答えたという。

 トヨタが潰れかねないプロジェクトを指揮した責任者を日経コンピュータ創刊25周年記念の催しに招き、パネルディスカッションに出ていただいた。いい話をしてもらったのだが、最後に来場者へのメッセージを求めたところ、「皆さんも挑戦してください。うちでもできたのですから」という発言が飛び出した。

 その方は素直にそう言ったのだが、「うちでもできた」の「うち」がトヨタであり、来場者の多くは「そう言われても」と思っただろう。

 さて、「反省」というのは、西暦2007年問題という言葉をつくり、「古くなった情報システムをすべて作り直してしまうこと」を推奨したことに対してである。2018年の今になってみると、2000何年問題やレガシー刷新などと煽ることは筆者としてはできない。失敗すれば倒産しかねないプロジェクトを「トヨタでもできたのだからあなたもやれ」とは言えない。

 ではどうすればよいか。前述の「遺産相続の計画」、すなわちデータアーキテクチャの整備から始めてはどうでしょう、というのが2018年における筆者の回答になる。これについても誰が、何をきっかけに、進めるのか、という問題があるがそれについては稿を改めたい。