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 「世界はテクノロジー(技術)でつながっている」。これは2020年10月12日に発行した書籍『日経テクノロジー展望 新型コロナに立ち向かう100の技術』の第1章の冒頭である。第2章から第8章までの編集を終え、最後に第1章を書いたので、この一文が編集者としての総括になる。

 『100の技術』は毎年10月に出しており今回で5冊目になる。従来は「翌年期待される技術」を100件選んで掲載してきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広がった今年は編集方針を変え、COVID-19にかかわる技術を集めた。

 100件は、医療や創薬などの専門誌である「日経メディカル」「日経バイオテク」、電機・建設・IT(情報技術)の専門誌である「日経エレクトロニクス」や「日経ものづくり」、「日経アーキテクチュア」「日経コンストラクション」、「日経コンピュータ」や「日経クロステック」などの編集長、日経BP 総研のラボ長らが選び、専門記者と研究員が解説を書いている。

 私事で恐縮だが7月末で定年退職し、8月から嘱託(定年後再雇用)になった。100件を選んでいたときは社員だったが編集作業を始めたときは社員ではなくなっていた。嘱託になったからではないと思うが、編集作業を9月末に終えた直後、放心状態となった。こう書くとさすがに大げさだが、それ相応にくたびれた。理由は3点ほどある。

 何といっても主題をCOVID-19にしたことが大きい。現在進行中の問題であり、治療薬やワクチン、オンライン診療といった創薬・医療関連の記述には特に注意を払う必要があり、最後まで気が抜けなかった。例年であれば「こんな面白い技術があります」「こちらもすごい技術です」といった調子で次々に技術を紹介していけばよかったが今年はそうはいかなかった。

 2番目の理由は編集の難しさである。収録した文章は新規に書いてもらったものもあれば既に専門誌やWebサイトに掲載されたものもあり、1冊にまとめるために表記をそろえたり一般の読者向けに書き直したりした。

 例年通りの作業だったが今回かなり苦労した。最重要の創薬・医療関連のところは日経バイオテクや日経メディカル、日経ヘルスケアの記事を使ったが、医薬品メーカーの専門家や医師向けに書かれたものだから専門用語が多用されており、読むとなかなか難しく感じる。といって勝手に言い換えると不正確な表記になるかもしれず、専門誌の編集長に確認してもらいつつ編集していった。

 治療薬やワクチンの仕組みを何とか理解し編集を終えると、続いてまったく畑違いの原稿を読むことになる。COVID-19はあらゆる産業、すべての生活に打撃を与えたから実に色々な技術がこの本に出てくる。ワクチンの説明を編集した後、建築現場における重機の遠隔操作や、外出制限の中で結婚相手を探すオンライン婚活の説明を読んでいるとなかなか不思議な気分になった。