本連載第2回では、改善マインド・改善風土・情報活用力からなる現場力が工場IoT構築に重要な役割を果たすこと、現場力を育むためには継続的な5S〔整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)〕活動が有効であることを述べた。今回は、工場IoT(Internet of Things)構築・運用の目的設定に対する考え方、およびIoT取得データを本当に活用するために必要な行動について解説する。

木を見て森を見ず

 IoTに限らず、攻め処を見極めて目的に沿った投資をしていくことが重要なのは言うまでもないことである。しかし、工場IoT投資においては、残念ながら目的がずれていると見受けられる事例が少なくない上に、得たデータを生産性向上につなげられていない例も多い。

 例えば、ある工場では、「設備稼働率を改善する」という目的でシステム投資を実施していた。最も稼働率の低い設備を改善対象に選定し、段取作業や工具発注ルールなどを改善。その結果、稼働率は大幅に向上し、社内では成功事例として認識されていた。

 しかし、工場全体に目を向けると、改善対象設備の稼働率は向上したものの、後工程の現場では仕掛品があふれ返り、仕掛量が増えてものを探すというムダが発生して残業も増えてしまっていた。その設備だけに着目して全体最適を考えていなかったのだ。

図1 各設備のサイクルタイムと稼働率
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図1 各設備のサイクルタイムと稼働率
設備Gが改善対象設備。棒グラフの長さがサイクルタイムを、%が設備稼働率を示している。

 この事例では、「設備稼働率を改善する」という目的設定がそもそもずれていた。「その設備の稼働率が改善したら、どんな事象が想定されるか」という検討ができていなかったのである。

 図1から明らかなように、ボトルネック工程はサイクルタイムが突出して長い別の設備(設備D)なので、改善対象とされた設備(設備G)の稼働率をいくら向上させたとしても、全体のサイクルタイムには変化がなく生産性は上がらない。導入検討時点で設備稼働率だけではなく、設備ごとのサイクルタイムや製品別の工程経路も事前に把握しておけば、避けられた失敗である。