平昌五輪で高い注目を集めたカーリング。山嵜一也氏の連載第3回は、その舞台となった「江陵カーリングセンター」を取り上げる。既存建築施設を改修した唯一の会場で、五輪会場規格に適合させる過程で様々な困難に直面した。(日経 xTECH/日経アーキテクチュア)
今回の平昌五輪は日本代表のメダルラッシュにより、日本の報道は盛り上がった。カーリング競技もその1つだろう。私もこの会場には注目していた。しかし、日本人選手の活躍を予見していたわけではない。カーリング会場に注目していたのは、この平昌五輪において唯一の既存建築施設を改修した五輪競技場だったからだ。
今までの歴史の上のレガシーとして
“氷上のチェス”と呼ばれる静かなる熱戦の舞台となったのが「江陵カーリングセンター」である。江陵オリンピック・パーク内北側にある江陵アイスアリーナ(フィギュアスケートなど)、江陵オーバル(スピードスケート)、江陵ホッケーセンター(アイスホッケー)の真新しい競技場の集まる一角から離れた西側にちょっと古ぼけたこの競技場はある。
このカーリング会場は江陵屋内アイスアリーナとして1998年に建設されたものを今回の五輪競技場とするために改修した。冬季アジア大会(99年)、4大陸フィギュア選手権大会(2005年)、ショートトラックスピードスケート世界選手権大会(07年)など今まで数々の名勝負が繰り広げられた競技場の歴史に、冬季五輪カーリング会場として新たな記憶が刻まれる。
レガシーと言うと未来に対する“遺すもの”としてばかり議論されているが、現在は過去の遺産の上に継承されたレガシーでもある。過去から現在に託された遺産を活用したのが、カーリング会場のような既存施設を改修した五輪競技場である。