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 米テクノロジー大手の大規模な人員削減が相次いでいる。報道や企業リリースなどで分かった整理解雇(リストラ)情報を集計するLayoffs.fyiによると、2022年は約16万人のレイオフ(一時解雇)が明らかになった。23年は2月3日時点で約8万7000人に達しており、この1カ月は前年から始まった一連の人員削減の中でも最悪な月だといわれている。

 中でも規模が大きいのはIT(情報技術)大手だ。新型コロナウイルス下の特需で2年半にわたり業績を伸ばし採用を拡大してきたIT大手だが、日常を取り戻した22年後半ごろから成長が鈍化し、軌道修正を余儀なくされている。

関連記事: Layoffs.fyi(米国を中心とするテクノロジー企業のリストラ情報を集計)
米テクノロジー大手の主な大規模レイオフ(2020年以降)
米テクノロジー大手の主な大規模レイオフ(2020年以降)
(出所:独Statista https://www.statista.com/chart/29175/largest-tech-layoffs-since-2020/)
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グーグル、過去最大の1万2000人削減

 米Google(グーグル)は23年1月20日、世界で約1万2000人の従業員を削減すると発表した。同社として過去最大のリストラである。スンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)は同日、公式ブログに「将来の私たちをつくるための難しい決断」と題する記事を投稿し、従業員宛ての電子メールを公開した。

 この中で同氏は、「過去2年間、私たちは劇的な成長を経験した。その成長に対応しさらに成長を加速させるために採用を続けたが、現在は当時とは異なる経済的現実に直面している」と述べた。「今回の決断について、私は全責任を負う」とも述べ、「大変申し訳なく思っている」と謝罪した。

 リストラ対象となるのは、持ち株会社である米Alphabet(アルファベット)の従業員の約6%。製品や事業、役職、地域を問わず、全社を横断するものになると同氏は説明した。だが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、採用部門や、非中核事業とみなされるプロジェクトなどの一部部門はより深刻な影響を受けるという。影響は、一部のバイスプレジデントレベルに及び、クラウドコンピューティングやスタートアップの社内インキュベーター制度「Area 120(エリア120)」なども対象になる。このArea 120は22年9月中旬にも人員整理の対象になっていたと同紙は報じている。

 22年9月末時点のアルファベット全体の従業員数は18万6779人で、約3年前(19年12月末)の11万8899人から約6割増えていた。今回発表された削減対象人数は、アルファベットが22年7~9月期に増員した1万2765人とほぼ同じ規模になる。

 アルファベット傘下で生命科学を手がける米Verily Life Sciences(ベリリー・ライフサイエンセス)は23年1月11日、従業員の約15%を削減したと発表した。だが、WSJによれば、ベリリーの従業員数は約1600人であったため、削減対象は200人程度だった。同社は09年にもリストラ策を発表したが、そのときは販売とマーケティング部門の200人程度だった。同社の幹部はここ数カ月、「統制が取れた効率的な支出のためにベルトを締めていく」と述べていた。だが、これまで大規模なリストラ策を発表していなかった。

 一方で、アルファベットの22年7~9月期業績は、売上高が前年同期比6.1%増の690億9200万ドル(約8兆9900億円)、営業利益は同18.5%減の171億3500万ドル(約2兆2300億円)、最終利益は同26.5%減の139億1000万ドル(約1兆8100億円)だった。

 こうした業績結果を受け、アクティビスト(物言う株主)として知られる英TCIファンド・マネジメントは22年11月、アルファベットに対してコストを削減するよう要求した。WSJによると、TCIは今回のリストラ策を受け、アルファベットに対しより積極的な対策を迫った。TCIのマネジングディレクター、クリストファー・ホーン氏は書簡で、「経営陣は、21年末時点の水準に合わせ、約15万人にまで減らすことを目指すべきだ」と述べた。6%ではなく、20%程度の削減を求めている。

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