「ソーシャルオーディオ」とも呼ばれる音声ベースの交流サービスに注目が集まっている。米Twitter(ツイッター)は2021年5月3日、音声ライブ配信機能を本格展開すると明らかにした。20年11月から「Spaces(スペース)」と呼ぶライブ討論機能を一部の利用者を対象にテストしていたが、今後はフォロワー数が600人以上のアカウントに限定してライブ配信を主催できるようにする。
チケット(入場料)制も導入し、収益化を支援する計画も明らかにした。数カ月以内に一部のアカウントを対象に有料ライブ配信「Ticketed Spaces」を開催できるようにする。同社は21年2月に開いたアナリスト向け説明会で、23年までに売上高を倍増させることなどを柱とする経営計画を発表。新たな機能やサービスの導入を加速させる考えだ。
フェイスブック、複数の音声関連サービスを予定
米Facebook(フェイスブック)は21年4月19日、音声を使って交流できるサービス「Live Audio Rooms(ライブオーディオルーム)」を開発中だと明らかにした。今夏にもフェイスブックのアプリや対話アプリ「メッセンジャー」内ですべてのユーザーが利用できるようになるとしている。
米CNBCによると、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、SNS(交流サイト)で音声関連サービスを拡充していく計画で、今後数年かけて投資を増やすとしている。同氏は声明で「オーディオは第1級のメディアになると考えている。今後この分野の全領域でさまざまなサービスが登場するだろう」と述べた。
同社のライブオーディオルームをまず、共通の趣味や興味を持つ人同士で交流するフェイスブック内の「グループ」に試験導入する。著名スポーツ選手やミュージシャン、テレビタレントなどが利用し、ファンとの交流を活発にしてもらう考えだ。ツイッターと同様、主催者が参加者に課金できる仕組みを用意する計画。都度の課金やサブスクリプション(定額課金)などを通じて情報発信者に収益化の手段を提供するという。
フェイスブックは「Soundbites(サウンドバイツ)」と呼ぶ、短尺の音声コンテンツをニュースフィード内に投稿できるサービスも始める。著名人などが、エピソードや笑い話、詩の朗読といったコンテンツを投稿できるようにする。また、「オーディオクリエーター基金(Audio Creator Fund)」を設立し、コンテンツ制作者を資金面で支援する。ロイターによると、フェイスブックはクリエーターとオーディエンスが質疑応答するアプリ「Hotline(ホットライン)」の公開テストも始めた。
スウェーデンの音楽配信大手Spotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)は21年4月26日、フェイスブックとコンテンツ共有で提携したと発表した。利用者はフェイスブックのアプリ内で、友人などが共有したスポティファイの楽曲やポッドキャスト(音声番組)を直接聴けるようになる。米国やインドネシア、南米諸国、日本などの27カ国で先行提供し、数カ月かけて対象国・地域を増やすとしている。
クラブハウス、Androidスマホにも展開へ
コロナ禍の在宅の広がりでSNSの利用が増える中、大手は収益拡大を狙い、新サービスの開発を急いでいる。その背景には、米スタートアップ企業が20年3月に始めた音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」がある。クラブハウスは米電気自動車(EV)大手Tesla(テスラ)のイーロン・マスクCEOやフェイスブックのザッカーバーグCEOなどが参加して人気に火が付いた。21年2月にはマスク氏がロシアのプーチン大統領を同サービスに招待したと報じられ話題になった。
クラブハウスはこれまで、米Apple(アップル)のスマートフォン「iPhone」のユーザーのみに提供されていたが、運営会社のAlpha Exploration(アルファ・エクスプロレーション)は21年5月9日、米Google(グーグル)の「Android」向けアプリを公開すると明らかにした。まず米国で配信開始し、その後段階的に他の英語圏、全世界へと広げていく。ロイターによると、アルファ・エクスプロレーションは同年4月18日に資金調達を実施した。関係者によると同社の評価額は40億ドル(約4400億円)となった。
「通信手段は一巡して音声に」
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は21年4月22日、「ソーシャルオーディオ」について、「我々は一巡して音声に戻りつつあるようだ」と報じた。かつて電話が主流だったコミュニケーションは、メールやテキストチャットに取って代わった。だが、ここ最近の勢いを見ると、「いつでもどこでも利用できるソーシャルオーディオはSNSの次のフロンティアとなる可能性がある」という。
クラブハウスが短期間で成長した状況を鑑みると、この分野は有望だと同紙は伝えている。クラブハウスがアップルのアプリストア「App Store」に登場したのは20年9月だった。半年後の21年2月には月間ダウンロード件数が1010万件へと急増。翌3月は170万件と減少したが、その理由は知名度がまだ低いからだと分析している。3月時点で83%の米国人がクラブハウスを全く知らない、あるいはよく知らないと答えたという。
フェイスブックは新サービスのライブオーディオルームをまずグループ内に導入するが、その月間利用者数は18億人で全利用者数の64%。フェイスブックは利用者規模で圧倒的有利な立場にあると同紙は報じている。