米Apple(アップル)が2022年4月28日に発表した22年1~3月期決算では、売上高、純利益ともに前年同期比で1桁台の伸びを見せた。だが同社の財務担当者は、4~6月期に最大80億ドル(約1兆500億円)の売り上げ機会を逃す可能性があると説明した。同社のiPhone製造を受託する中国内の工場が都市封鎖(ロックダウン)による影響を避けられない一方、一部の工場は再稼働を始めている。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は22年4月29日、中国・上海市とその近郊都市に拠点を持つアップルの主要サプライヤー(取引先)が工場の操業を再開しつつあると報じた。上海の西約50キロメートルに位置する江蘇省昆山市では、電子機器受託製造サービス(EMS)大手の中国・立訊精密工業(ラックスシェア)や台湾・緯創資通(ウィストロン)などを、生産再開の優先的企業を意味する「Covidフリー企業」に指定し、そのリストを公表した。
これらのサプライヤーは、外部との接触を断つ「バブル方式」を採用している。工員や作業員は工場と、隣接する宿舎から外に出ず仕事と生活をしており、PCR検査も頻繁に受けている。中国各地で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、この方法により経済活動が再開されつつあるという。
プリント基板の台湾・欣興電子(ユニマイクロン)は22年4月28日、江蘇省での生産を再開したと明らかにした。ノートパソコンの最終組み立てを主力とするEMS大手の台湾・広達電脳(クアンタ)は22年4月15日に上海工場で生産の一部を再開した。
習近平指導部は徹底して感染を抑え込むゼロコロナ政策を堅持する方針を示しており、上海と、近郊の江蘇省、浙江省では厳しい外出制限が敷かれて1カ月以上がたった。これらの地域では交通も厳しく規制されている。アップルの主要サプライヤーはその多くが生産停止を余儀なくされたが、政府はその後、経済への影響を回避しようと工場の操業を再開させる政策を打ち出した。これまでのところ計画は段階的に進められているという。
アップルの逸失売上高、4~6月は最大80億ドルに
しかし、アップルの今後の業績は、サプライヤーがどれだけ迅速かつ広範囲に事業再開できるかにかかっているとWSJは報じている。アップルが22年4月28日に発表した22年1~3月期決算は、売上高が前年同期比9%増の972億7800万ドル(約12兆7100億円)、純利益が同6%増の250億1000万ドル(約3兆2700億円)だった。売上高全体の52%を占めるスマートフォン「iPhone」の売上高は同5%増の505億7000万ドル(約6兆6100億円)だった。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はこの日の電話会見で、「完成品の最終組み立て工場はすでにほとんどが生産を再開しており、上海ではこの数日間で新規感染者数が減少している」と述べた。一方で同氏は、「本格再開のためには他の分野でも生産を拡大させる必要がある」との認識も示した。
ロイター通信によると、ルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)はロシアによるウクライナ侵攻後にロシア国内での販売を中止したことで、アップルの22年4~6月期の販売額を押し下げると警鐘を鳴らしている。半導体などの供給制約によって同期に最大80億ドル(約1兆500億円)の売り上げ機会を逃す可能性があると説明した。
これに先立つ21年7~9月期の決算発表でアップルは同四半期の逸失売上高が約60億ドル(約7800億円)となり、同4~6月期の30億ドル(約3900億円)弱から倍増したと明らかにしていた。WSJによると、米アライアンス・バーンスタインのシニアリサーチアナリストのトニ・サカーノギー氏は、アップルの21年10~12月期の逸失売上高が最大70億ドル(約9100億円)に上ったとみている。一方で22年1~3月期の逸失売上高は10億~20億ドルにとどまり、サプライチェーン(供給網)の停滞は改善されたと同氏は指摘している。
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